イワシタ ヒロシ
昭和31年 7月14日 東京生まれ。
昭和54年 3月 慶應義塾大学工学部及び放送研究会卒業後、株式会社電通に入社、東京本社ラジオテレビ局配属。
平成12年 第14営業局部長就任。
平成17年 スポーツ事業局次長に就任し、大阪世界陸上室室長兼務。
平成19年 ラジオ局次長就任。
平成22年12月1日、株式会社radiko 出向(現職)。
スマートフォンの急速な普及により、さまざまなコンテンツの価値に大きな変革が生じている。
そのポジティブな変革のひとつが、ラジオ放送というコンテンツに起きていることは、先日、株式会社J-WAVE代表取締役社長 小笠原徹さんにも伺った(G-PRESS 2011年1月号 Vol.91参照)。こうした変革を、ラジオ業界はどのようなチャンスと受け止め、どのようなアクションをとろうと考えているのか。
サービス開始した昨年から現在まで、PCエアガジェットおよびスマートフォンアプリとして約500万ダウンロードを数えるradiko.jp。運営しているのは、ラジオ放送局13社と電通によって昨年12月に設立された株式会社radiko。その使命、意義と今後の展望について、当社代表取締役社長 岩下宏さんにお話をきいてみました。
―radiko.jpは、電通が主導となって生まれたサービスとききます。その経緯について、おきかせいただけますか。
きっかけは、ラジオ業界の切実な業績の不振。ラジオ広告のピークは1991年の約2,400億円。そこから下降の一途をたどり、2010年はほぼ半減して1,300億円まで落ち込んでいます。
そんな状況のなか、放送と通信の融合が話題となり始め、ラジオでどうだという機運が5、6年前から高まっていました。
当初、関西電通が主体となり関西の放送局6局による試験配信事業として始まりました。その後、関東の放送局7局が加わり、この13局と電通の14社で株式会社radikoを立ち上げました。また、本年3月には名古屋、4月に北海道、福岡で実用化試験配信をスタートしており、現在、全国の7割弱の方がradiko.jpを聞くことができる環境が整ってきた状況です。
―radiko.jpは起死回生の一手。特に、スマートフォンの急伸長は、ラジオにとって大きな追い風ですよね。
4月には、『App DIME』の第1回スマートフォンアプリ大賞の「iPhoneアプリ ライフスタイル部門賞」で表彰していただくなど、色々なメディアが数多く取り上げてくれたおかげもあり、今のところ、広告やPRを一切打たずとも、すでに約200万ダウンロードを超えました。
そういった数量的なインパクトもさることながら、これからの若い世代の中心端末に入っていけたことを、質的なインパクトとして意義深く思っています。
つい数年前までのラジオの課題は、難聴取に加え、聴取世代の高齢化が大きな問題でした。地上波の聴取者の平均年齢は48才。このままいくといずれラジオを知る世代がいなくなってしまう、という危機。スマートフォンという新しいデジタル端末の登場・普及は、その危機を払拭できるチャンスを与えてくれました。
昨年秋時点でのradiko.jpの聴取者の平均年齢は38才、今年に入ってから、益々平均年齢は下がる傾向にあります。ラジオを知らない若い世代が、radiko.jpで初めてラジオを知り、ラジオそのものを理解するきっかけが生まれることは、これからのラジオ媒体の価値の復権に大いに役立つと考えています。
―今後、端末のデジタル化が進めば進むほど、ラジオのチャンスは拡がっていくということでしょうか。
パナソニックの「ビエラ」テレビ(今夏サービス開始予定)にもradiko.jpアプリが搭載されるように、WiFi環境さえ整えば、冷蔵庫からでもradiko.jpがきけるかもしれません。いろいろな端末の更なるデジタル化、あるいは家電の進化によって、一度、ラジカセと共に家から消えかけたラジオが、いつの間にか家中いたるところに戻ってくる可能性は大いにあるでしょう。
しかし個人的には、そう楽観的に考えてはおりません。
「今」が、ラジオにとって最大のラッキー・ウェーブだと思っています。「今」、この波に乗らなければ、もう二度とラジオにはチャンスが来ないのではないか、と。だからこそ、業界一丸となってこの波を最大限に活かすべきだと思っています。
ラジオ放送というコンテンツ自体の価値は、昔も今も変わっていません。図らずも、今回の震災で、ラジオ放送の価値は再認識されましたし、若者に対するパーソナリティの影響力や音楽の力は、古今東西不変のものです。問題は、それに接触する機会を、時代の波を乗り越えながらどう維持していくか、ということです。
―最後に、radiko.jpにとって、電子番組表とはどんな位置づけのものか教えてください。
Skypeの大きなユニークポイントは、「何もしなくても、ずっと繋がっていてよい」というコミュニケーション状態を作れるという点だと思います。
非常に重要なコンテンツだと思っています。
新聞のラテ面という限られたスペースではできなかった聴取者とのコミュニケーションが可能なわけですから、ラジオ放送に接触する新たな導線を創ることができるでしょう。デジタル端末に出て行ったことによって生まれる新たな可能性のひとつですから、電子番組表の充実は、今後の重要な課題です。
―本日はお忙しいところ、貴重なお話をありがとうございました。
気になるテレビ語 groovy word on TV
『アスコーマーチ』
テレビ朝日系列で放映されているドラマ「アスコ―マーチ」(毎週日曜・23時~)に検索数の世界の奥深さを感じました。
男子だらけの工業高校に入学した一人の女子生徒の物語で、主人公の女子生徒を演じているのがドラマ初主演の「武井咲」です。モデル、女優として活躍する17歳は、10・20代からの人気が高く、ドラマ開始月の検索数は7,234(4月)と4,591(3月)からアップしています。
気になる「アスコ―マーチ」の検索数は3,349(4月)→21,386(5月)と大幅アップ。この要因は、10・20代の視聴者が比較的多いといわれている時間帯と前述した『武井咲の人気』のマッチング、さらに『休止や変更がよくあるから確認する』という二点が掛け合わさった結果と考えられます。
5話分の放送予定だった5月は、前後の特番の影響で2話が放映休止となりました。放映日(5/1・15・29)の検索数が590、672、755というのに対して、放映中止日(5/8・22)が4,833、3,235となっています。同様の例として、26時台に放映されるアニメは放映時間が変更されることが多く、実際に変更がされた日のそのアニメの検索数は高くなることがあります。『見たい』という興味・欲望が『検索』というアクションを起こす。休止や変更があっても、その番組を楽しみに待つ視聴者が必ずいることを「アスコ―マーチ」の検索数は示していると思います。
『Gガイドモバイル』ユーザ検索ログデータより 集計期間:2011/5/1-5/31