株式会社 IPG

ipg

IPGのサービス、Gガイド、Gガイドモバイル、シンジケーティッドGガイド、Gガイド for Wii、G-Guide for windows

Gプレスインタビュー

2010.December | vol.90

印刷用ファイル
vol90photo

日本のデジタルメディアの未来。

慶應義塾大学大学院メディアデザイン研究科
教授

岸 博幸 さん

キシ ヒロユキ
慶應義塾大学大学院メディアデザイン研究科教授
エイベックス・ホールディングス顧問
1986年通産省入省後、コロンビア大学経営大学院にてMBAを取得。
2001年、竹中平蔵大臣(当時)補佐官、2004年以降は政務秘書官に就任。同大臣の側近として、不良債権処理や郵政民営化などの構造改革の立案・実行に携わる。
総務大臣政務秘書官を経て2006年経産省を退官。

来年は、メディアにとってデジタル化の大きな節目の年といえる。地上波テレビ放送のデジタル化をはじめ、インターネットテレビや電子書籍が旋風を巻き起こす兆しもある。コンテンツのデジタル化は、日本ではなく世界中で同様のスピードで進行しており、とりわけ、インターネットテレビをいち早く普及させ、KindleやiPadといった端末を普及させてきたアメリカ合衆国は、そのリーディングポジションにある。
そんな時代の中、日本のメディアは、どこへ向かおうとしているのか、向かうべきなのか。
今年最後のGプレスとして、日本のメディアの大局観を、慶應義塾大学大学院、岸博幸教授にうかがってみました。

―日本のテレビは、どうなっていくだろう、また、どうなっていくべきだとお考えですか?

今のテレビを見て率直に思うことは、「もったいないなぁ…」ということです。本当はもっと力のあるメディアになれるのに、最近の日本のテレビはその潜在能力を発揮できていない。何か「いろいろなもの」に振り回されて、本来の能力を見失っている感じがします。
その「いろいろなもの」の一つが、デジタル化であったり、ネットへの対応だったりするわけですが、私が一視聴者として感じるのは、こんなにもハイクオリティな映像をこんなにも大画面で、しかもリビングという場所で楽しめるメディアの価値は、そう下がるものではありません。いいコンテンツをきちんと流せば、いまだに皆テレビにくぎ付けになります。
たとえば、今年のプロ野球の日本シリーズ、ロッテ対中日のカードも、野球はもう視聴率はとれないといわれるなかで、フジテレビ系列が頑張って放映しました。日本一を賭けた白熱した試合内容に、かなり高い視聴率がとれたとききます。
要するに、デジタル化とか、ネットとの融合、連携とか、そういうことにあまり右往左往されず、ドンと構えて「テレビらしいこと」を丁寧にやっていけば、視聴者はおのずとついてくると思います。

―ネットコンテンツの急速な台頭によって、テレビが生き残っていくための前提が大きく変わったと思うのですが、そういう中で「テレビらしいこと」とは?

ネットコンテンツの台頭による一番大きなインパクトの一つは、「コンテンツのグローバル化」ということです。そして、グローバル化が起きると、価格破壊という衝撃が生まれます。YouTubeに象徴されるようにいままで有料で見ていたコンテンツが無料で見れるようになりました。
こういうグローバル化の時代において、生き残る道は2通りしかないと思います。
一つは「ユニクロ型」とでもいいましょうか、ユニバーサルデザインと、徹底したコスト管理システムのもと、常に価格破壊の先端にいつづける、という生き残り方。もう一つは、「シャネル」「エルメス」のように、独自のデザインと、価格破壊の論理の中には決して入らない、徹底した<変体>になること。
この2つのどちらか。
そして、文化やジャーナリズムというものは、絶対に後者であるべきものだと思います。だから、テレビは、文化やジャーナリズムを担うメディアである以上、<変体>でなければならない。にも関わらず、最近のテレビはそうなれていない。コスト管理の世界の波に飲みこまれていきかねない危うい感じがありますよね。

―もっと独自性を磨いていくべき、ということですね。

そうです。一見パラドックスですが、グローバル化が進めば進むほど、ローカル化に磨きをかけていくべきなのです。そうでないと逆に生き残っていけない。
たとえば、ついこの間、"web2.0"が全世界で一世風靡しましたよね。アメリカのメディアは一気にネットに進出しましたが、日本のメディアはそれに同調しませんでした。あのとき、「これではグローバル化にとり残される」という批判もありましたが、今になって振り返れば、あのときアメリカに追随しなくてよかったわけです。
言い換えれば、グローバル化の波が押し寄せたときこそ、そこに迎合し右往左往するよりもコンテンツの中身とビジネスモデルの双方で自分のオリジナリティを磨いていくことの方が大事、ということです。

―それは、今ブームの電子書籍についても同じことが言えるでしょうか。

そう思います。そもそも日本の書籍環境は、KindleやiPadを生んだアメリカと180度異なります。アメリカは、本屋が少なく図書館が多い。一方、日本は、本屋が多く図書館が少ない。
日本には全国1万5千店の書店があるのに対して、アメリカは、人口も国土も日本よりはるかに大きいにも関わらず、一般書店の数は3千程度です。だから、日本とアメリカとでは、電子書籍の意義が根本的に違うのです。だから、KindleやiPadを見て、「日本もこれからは電子書籍の時代だ」と吹聴するのは、私は早計すぎる見方だと思います。

―本日はお忙しいところ、興味深いお話をありがとうございました。

気になるテレビ語 groovy word on TV 『セカンドバージン』


今回のテレビ語は、巷で「10年に1度の名作」といわれ、特に女性から熱烈な支持を得たドラマ「セカンドバージン」(NHK総合 毎週火曜日よる10時)を紹介します。45歳のバツイチ辣腕出版プロデューサー・中村るい(鈴木京香)と、17歳年下のネット証券会社社長・鈴木行(長谷川博巳)とのラブストーリー。
二人の他にも資産家の娘であり、行の妻・万理江(深田恭子)、るいの息子の彼女であり、良き理解者でもある愛子(YOU)、るいの勤める出版社の社長であり、男女の関係を越えた同志のような存在の向井(段田安則)などが脇を固めています。
スリリングな展開、美しい映像、キャストの迫真の演技。そして、外国映画のラブロマンスを彷彿とさせるようなラブシーン。
気になる検索数は4,251(10月)→5,478(11月)とアップ。最終回(12/14)の検索数は303、順位は過去最高の34位。12月の月間検索数がどこまでアップするか注目ですね!
雑誌で特集が組まれるなど、回を重ねるごとに注目度が高まった「セカンドバージン」。このドラマには年齢という壁を越え、男と女が一途に愛し愛されたいと想う気持ち、さらには若さの輝きではなく、長く生きてこそ輝く女性=るいの毅然とした姿が、説得力を持って描かれています。これらの描写が、視聴者を釘付けにしたこのドラマの魅力ではないでしょうか。


『Gガイドモバイル』ユーザ検索ログデータより 集計期間:2010/11/1-11/30

バックナンバー

2011 / 2010 / 2009 / 2008 / 2007 / 2006 / 2005 / 2004 / 2003 / 2002