2010.September | vol.87
いま、放送局がやるべきこと。
株式会社TBSテレビ 編成制作局 マーケティング&プロモーションセンター
センター長 兼 マーケティング部長
高綱 康裕さん
タカツナ ヤスヒロ
昭和58年3月早稲田大学政治経済学部卒業。同年4月東京放送入社。
ラジオ局制作部で「サーフ&スノウ」や「東京RADIO CLUB」など、数々のヒット番組を多数プロデュース。
平成10年6月制作局制作部副部長時には主婦向け情報番組のイメージを変える「はなまるマーケット」の立ち上げに携わる。
その後、制作部担当部長、人事部担当部長、宣伝部長を経て、平成22年2月現職。
放送局は、大きな転機を迎えている。来年に全国地上放送の完全デジタル化を控え、テレビ業界には様々な変化が起きようとしている。一方で、テレビ離れ、リーマンショック以来の景気低迷等の影響で、スポンサー収入は減少し続けている。スポンサー収入が減れば、番組制作費が削られる。制作費が削られると、良い番組が作れなくなる。そうなると、ますますテレビ離れ、スポンサー離れが進む。そんな悪循環をどうやって阻止するか。各放送局は様々な対策、工夫を行っている。
その実態はいかに。TBSテレビ マーケティング&プロモーションセンター長 高綱 康裕さんにお話を伺いました。
―私たちが提供している「電子番組表(EPG)」サービスについて、高綱さんはどのようにお考えでしょうか。
EPGの特徴は大きくふたつ、「検索性」と「情報量の多さ」でしょうね。
様々なジャンルやタレント名、番組名などから、どんなにマイナーな番組でも、瞬時に検索することができます。また、今までは限られた文字数の中で、タイトルしか載せられなかったような番組でも、たくさんの情報を掲載することが可能です。
そして、新聞、雑誌における番組情報と決定的に違うのは、EPGはテレビという端末の中にある番組情報コンテンツだということ。リモコン操作ひとつで、番組視聴と最短で直結しているわけです。となると、もはや「番組情報」という域を超え、「そこからすでに放送が始まっている」感覚で捉えるべきコンテンツだと思っています。
こうしたEPGの特性を前提とした番組情報の提供が、放送局に求められる時代になったと考えています。
―放送局が媒体社に提供する番組情報の内容が、以前とは変わったということですか?
一部では、ですね。地デジ化に向けたデジタルテレビの普及に相まって、EPGはすべてのテレビ視聴者が見ることの出来る、影響力の大きい媒体になりつつあるわけですが、そのことを放送局の人間がどれだけ意識しているかというと、まだまだです。現在TBSでは、番組情報を各番組の担当者が書いていますが、やはり「番組を作る」ことが第一目的なので、そこまでEPGのことに意識が回っていないのが現状です。
そこで、この4月よりEPG部門を宣伝部に編入して、番組担当者への意識付けをはじめ、EPGの有効な活用法に取組むことにしました。
―近年、各放送局は、放送外収入に力を入れてきていますよね。
番組販売、番組関連グッズやDVD販売、映画はもちろん、番組情報を有効利用して副収入を生み出していくという新しいビジネススキームの創出は、今後も必要だとは思っています。しかし、これは私見なのですが、放送外収入ビジネスに関しては、毅然としたポリシーと慎重さをもって取り組まないといけない。
でないと、放送局として最も大事なものを見失いかねない、と思っています。
―最も大事なもの、とは。
「信用」です。おっしゃる通り、ここ数年テレビの力が落ちてきたと言われています。
そもそも「テレビの力」とは何でしょう。多くは世の中に対する影響力、と答えるのではないでしょうか。では、その影響力を支えてきたものは何か―それが「信用」です。「テレビで放映されることは、間違いのない確かなことである」という「信用」。
来年TBSは開局60年を迎えますが、60年間変わらず大事にし続けてきたものは、この「信用」です。しかし、近年、テレビ全体がヤラセや過剰演出といったいわば「影響力の大きいメディアの過信から生まれた過ち」によって、その大事にし続けてきたもの自壊するような事態が起きました。これは大きな問題です。視聴率も大事、収入も大事ですが、その大前提となる「信用」を再構築することが、いま私たちの急務だと思っています。
―ある意味、テレビというメディアの原点にたちかえるということかもしれませんね。
そのとおりです。放送外収入を目的にしすぎてしまうと、番組自体の「信用」が揺らぎかねません。もし、長いCMを見ているような番組が増えていったなら、「なぁんだ、よい番組を作るためにやっているのではなく、商売のためにやっているのか」と視聴者の方は思うでしょう。
テレビとは本来、ごまかしのきかないメディアなのです。
TBSでは、その原点をみつめなおして気を引き締め、デジタル新時代に向けて新たなスタートをしたいと思っています。
―本日はお忙しいなか、興味深いお話をありがとうございました。
気になるテレビ語 groovy word on TV 『ピース』
テレビをつければ、芸人を目にしない日はないと断言できる程、バラエティ番組・ネタ番組が増え、芸人の数も増えてきています。そんな群雄割拠のお笑い時代。今回のテレビ語では、そんな時代の荒波を実力で掻き分け、頭角を表すと共に、検索数も伸びてきたお笑いコンビ【ピース】を紹介します。
ボケの【又吉直樹】は吉本興業きっての文学青年と言われており、雑誌の連載も持っているほど、その文才には定評があります。大喜利ネタにも定評があります。ツッコミの【綾部祐二】はピンでも【すべらない話】や【アメトーーク!】に出演するなど、トークの上手さ、そしてルックスの良さから人気を博しています。
検索数は5月が7,861、6月が5,501、7月が6,698となかなか高い数値をキープしています。そして8月には今年最高の10,405という数字をたたき出しました。
これは9/23にTBSで放映された【キングオブコント2010】決勝ラウンドへの初出場が決まったことが一つの要因として挙げられるのではないでしょうか。番組では1stステージが827点、2ndステージでは942点という今大会最高得点をマークしましたが、優勝に後一歩及ばず2位となりました。ここから更に人気も、検索数も上昇していく予感がします。
『Gガイドモバイル』ユーザ検索ログデータより 集計期間:2010/8/1-8/31