株式会社 IPG

ipg

IPGのサービス、Gガイド、Gガイドモバイル、シンジケーティッドGガイド、Gガイド for Wii、G-Guide for windows

Gプレスインタビュー

2010.July | vol.85

印刷用ファイル
vol85photo

放送と通信。目指すべきは、「融合」でも「連携」でもない。

経済産業省 商務情報政策局 情報経済課
国際戦略情報分析官(情報産業担当)

境 真良さん

サカイ マサヨシ
1968年、東京都生まれ。
93年通商産業省(現・経済産業省)入省。
2001年から、メディアコンテンツ課課長補佐、東京国際映画祭事務局長、商務情報政策局プラットフォーム政策室課長補佐、早稲田大学大学院国際情報通信研究科客員准教授(コンテンツ産業論)を経て、2009年7月より現職。
アジアの都市文化融合現象を15年追っており、趣味はアイドル研究、読書(マンガ)、コンピュータいじり等。

当コーナー《Gな人》では、「放送と通信の融合、連携」をテーマに、様々な方にインタビューを行ってきた。放送事業者と通信事業者。コンテンツプロバイダーという観点からすれば、両者とも共通であるにも関わらず、なぜ遅々として進まない部分も多いのだろうか。
その疑問を、行政という視点から考えてみると、放送や通信は総務省が主管轄の事業であり、その上のサービスやコンテンツは経済産業省が主管轄の事業であるという、縦割りの構図が浮かび上がる。そこにはどのような課題が存在し、今後どうなっていくのか。プロジェクトのキーマンであり、著書歴も多数、経済産業省 国際戦略情報分析官の境真良さんにお話をうかがってみました。

―放送と通信の融合、連携をテーマにしたとき、「テレビとインターネットの壁」といったことがしばしば語られます。この「壁」について、どのように考えていらっしゃいますか?

端的に申し上げれば、「その壁は、いま崩壊しつつあり、いずれ完全になくなる日が来るかもしれない」ということです。
テレビとインターネットの間には、「コンテンツ選択のメカニズムの違い」が本質にあります。テレビの場合、プロが作るコンテンツですから、そのアウトプットの「質」が、見るに値するかどうかの判断基準に直結します。一方、インターネットの場合、web2.0以降は、あるメカニズムによって割り出されたコンテンツの序列、たとえば検索で上位に来ているか否かが、見る側の判断基準に直結します。いわば、コンテンツの価値が「量」の論理で決まるということ。質の論理と量の論理-これが両者の「壁」の本質です。
ところが、最近になって、インターネットにおいても「質の論理」が生まれつつあります。たとえば、プロのブロガーという職業が発生しているのは、その象徴。インターネットにも「質の論理」が浸透していくと、壁はだんだん小さくなっていくでしょう。

―以前はマスメディアしか提供できなかった性質のコンテンツが、インターネットでも提供できるようになる。今、ちょうどその過渡期にあるということですね。

すでに、その現象はいろいろな形で起きています。マスメディアの力は、世の人々がコミュニケーションするために必要な共通の話題を提供することです。流通力も大事ですが、それだけの力がある作品が何より大事。それを、かつてマスメディアは自ら生み出していました。でも、先ほどプロのブロガーの話をしましたが、今はプロのブロガーから出発し、プロのジャーナリストや作家になり、テレビに出たり本を出したりする人が出ている。これからもどんどん出てくるでしょう。
昔、ラジオの投稿職人というのがいました。投稿職人の中から、面白い人材が発掘され放送作家になっていく…それと同じような現象が、これから、インターネットとマスメディアの間で起きていくでしょう。その過程の中で、マスメディアと比肩しうるようなブロガーやクリエーターが、マスメディアではなく、インターネット上で敢えて活動するような事態は、当然起きてくる。
マスメディアがこうした新しい人材とコンテンツを取り込む努力を怠ると、インターネットにおける彼らの活動はどんどんマスメディアの役割を代替していくでしょう。そういう過程の中に私たちは居る。

―インターネット上で、プロとノンプロ、それぞれのコンテンツの混在化が進むと。そうなると、インターネットコンテンツの有料化、課金化という問題にぶつかりますよね。

まさに、問題はそこです。インターネットの世界では、まだコンテンツによる収益の構造を作れていないのです。インターネットにおけるコンテンツのばらまき構造-これが、コンテンツ産業界を疲弊させていることは事実。マスメディアとインターネットのバランスが相対化していく中で、産業メカニズムをもっている領域が狭まり、ばらまきの領域が膨らんでいけば、当然、業界全体の産業規模は縮小していきます。私たちは、そこに何とかメスを入れていかなくてはいけないでしょう。
「放送と通信の融合、連携」という言葉がしばしば使われますが、目指すべきは、「融合」でも「連携」でもないと私は考えています。放送と通信の両方を包括する「抜本的なビジネスの仕組みを形成すること」が必要なのです。

―そういう意味では、KindleやiPadの普及は、新しいビジネススキームを生み出すきっかけになるのではないでしょうか。

確かに、オンラインコンテンツのマネタイズの機会を創出したという意味で、KindleやiPadは大きいです。しかし、この分野において、アメリカにやられっぱなしというのは…私は納得いきません(笑)。やはり、日本オリジナルのスキームを生み出したいです。

―日本オリジナルのスキームを作るために、必要なことは何でしょうか。

デバイス提供者とコンテンツ提供者が、もっと向き合うことです。特に、後者が前者に対してもっと積極的に仕掛けていくべき。その意味で、放送局には頑張ってもらわないといけません。さまざまなデバイスともっと深く向き合うべきです。
たとえば、優れたスキームとして書籍流通の仕組みを挙げてもいいかもしれません。
著者-出版社-問屋-書店という各業者を一貫するスキームが、出版社の努力の上に整備されている。だからこそ、有名な著者の書物も無名の著者の書物も、あるいは10万部刷られた書物も1000部しか刷られない書物も、すべてに均等なビジネス機会が提供される。今、電子書籍の話題が旬ですが、出版社はこの動きを無視するどころか、インターネットの環境の上にもこの書籍流通の仕組みを移植しようとしています。このようなビジネススキームを映像においても築いていくことが、日本としての使命ではないかと考えています。

―本日はお忙しいなか、興味深いお話をありがとうございました。

気になるテレビ語 groovy word on TV 『ヘタリア』


盛り上がりましたね~サッカーW杯。下馬評を覆した日本代表の戦いぶりには感動しました。そんなわけでW杯関連の…と言いたいところですが、今回のテレビ語ではBS11で放映されているアニメ「ヘタリア」を紹介します。
最初はW杯の影響で「イタリア」の検索間違えではないかとか、1次リーグ敗退の腹いせではないかと考えていたのですが、私たちの勉強不足でした。その「ヘタリア」ですが、「イタリア」「ドイツ」を中心に「日本」「アメリカ」「イギリス」「フランス」などを擬人化し、その国民性や世界史のエピソードを織り交ぜて、繰り広げられるストーリー。
もともとネット配信のみだったのが、各国のキャラ設定(物議を醸し出したこともありましたが)などが話題となり、人気に火が付きました。今年の6月には「銀幕ヘタリアAxis Powers Paint it, White(白くぬれ!)」と劇場版も公開され、ぴあの初日満足度でも87.8と好評を得ました。その結果、満を持して今月9日からBS11で第一部の放映が始まりました(ネット配信は第三部)。
検索数は1月~5月まで平均146だったのが、6月には1,025にジャンプアップ。映画公開とBSでの放映が決定したことがジャンプアップの要因になったのではないでしょうか。ちなみに「日本」のキャラ設定の一つに「四季の変化や年中行事をこよなく愛し、風流を粋とする」というのがあるようです。


『Gガイドモバイル』ユーザ検索ログデータより 集計期間:2010/6/1-6/30

バックナンバー

2011 / 2010 / 2009 / 2008 / 2007 / 2006 / 2005 / 2004 / 2003 / 2002