2010.May | vol.83
「iPad」で、雑誌はどう変わるのか。
コンデナスト・パブリケーションズ・ジャパン 代表取締役社長
兼 VOGUE NIPPON / GQ JAPAN / VOGUE HOMMES JAPAN 発行人
北田 淳さん
1968年 6月埼玉県で生まれる。
1991年 武蔵大学を卒業後、株式会社アド電通東京入社。ファッションブランドの営業及び新規開発チームとして従事。
1992年 11月 株式会社中央公論社へ。広告局で「GQ JAPAN」の広告を担当。
その後、1997年8月コンデナスト・パブリケーションズ・ジャパン入社。広告・マーケティング部長などを経て、2010年現職。
「VOGUE NIPPON」「GQ JAPAN」「VOGUE HOMMES JAPAN」3誌の電子雑誌アプリが、iPadの日本発売に合わせて提供される。発行元のコンデナスト・パブリケーションズ・ジャパンは、3誌それぞれが持つブランドを、紙媒体、パソコン、携帯、スマートフォン向けのWEBサイトやタブレット端末など、マルチプラットフォームで展開し、媒体や端末の特性に合わせたコンテンツ提供とレイアウト表現を行う方針を打ち出している。
低迷メディアと評される《紙メディア》にとって、iPadという新しい端末の登場は、どんな光明を与えてくれるのか。コンデナストの代表取締役社長、北田淳さんにお話をうかがいました。
―「VOGUE」「GQ」という、≪ハイクオリティマガジン≫を発刊している御社にとって、iPadの登場は、どのような画期と捉えていますか?
出版不況と言われます。確かに、雑誌離れは進んでいます。しかし、雑誌のコンテンツそのものが世の中に受け入れられなくなっているのかというと、まったくそうではありません。「VOGUE」「GQ」の写真や記事は、依然として読者の心を捉えるクオリティをキープしていると自負しています。私たちの仕事は、読者に紙を届けることではなく、コンテンツを届けることです。
私は社長に就任して以来、こう言っています。「僕らは、出版社であることを忘れよう。マルチメディアカンパニーとなり、コンテンツホルダー、コンテンツメーカーとして価値のあるものを作りマネタイズしていく、そういう会社でありつづけよう」と。私たちの新しい指針を具現化する一つのツールとして、iPadの登場はとても意義深いものです。
―紙メディアのコンテンツ価値は、紙だからこそ伝わるもので、電子雑誌化するとまったく違う価値のものになってしまう、と考える方も多いですよね?
大切なのはその雑誌が長年築き上げてきた「世界観」を崩さないことです。いわゆる、ブランドですね。ゆるぎない世界観、ブランドを持っている雑誌の場合、紙媒体か電子媒体かの違いによって、コンテンツ自体の価値が左右されることはないと思っています。
ただ、どんな電子媒体にでもマルチ展開していいというわけではなく、固有の世界観を崩さずに展開できるのか、きちんと選ぶ必要がある。だからこそ、iPadなのです。この端末であれば、「VOGUE」「GQ」の世界観を崩さずに展開できる確信があったからこそ、いち早く電子雑誌化に名乗りをあげたわけです。前例のない取り組みですから、走りながら考えています。
―本誌と電子雑誌は、どのような位置づけ、棲み分けを考えているのでしょうか。
先ほど「出版社であることを忘れよう」と申し上げました。その発言と一瞬矛盾したことにきこえるかもしれませんが、私たちは、「紙媒体のための電子雑誌」という前提に立っています。「電子雑誌は、出版不況を乗り切る苦肉の代替メディア」と評する方もいらっしゃいますが、私は決してそのように考えていません。
電子雑誌の意義は、大きく二つあります。一つは、新しいマネタイズのスキーム開発ツールとして。もう一つは、既存媒体の活性と新規読者の開拓ツールとして。世の中の一般論では、どうしても前者の意義に比重が置かれがちですが、私は後者の意義を大きく見ています。「VOGUE」「GQ」がiPadという端末に載ることで、当誌を知らなかった人や知っていても関心を抱かなかった人に対して、アプローチ、アピールすることができる-このこと自体が、電子雑誌を展開する大きな意義です。
―電子雑誌は、他の媒体との新しい連携や融合が生まれるというベネフィットもあると思います。そのあたりの取り組みは何かされていますか?
これからですね。個人的には、テレビまわりのコンテンツと連携、融合できたら面白いなぁと思っています。雑誌になくて電子雑誌にあるもの-それは、音と映像です。iPadのアプリ開発に着手するにあたり、編集者は取材の際、写真だけでなく、映像の撮影もプロデュースするようになりました。世界観はそのままに、これからは音や映像を随所にちりばめた「VOGUE」「GQ」をご提供できるようになるでしょう。そして、もともと音と映像の宝庫であるテレビコンテンツと何かコラボできたら、更に斬新なクリエーションがうまれるのではないか、そう考えています。
―本日はお忙しいところ、興味深いお話をありがとうございました。
気になるテレビ語 groovy word on TV 『釣り』
今回のテレビ語は『釣り』です。なぜ『釣り』なのか?その答えは、乱高下の少ない検索数にあります。テレビ語が始まった2009年9月から、今月までの検索数を順に挙げると3012、3827、3446、3663、4047、2672、2800、3205となり、平均すると一ヶ月辺り3,000件越えています。ランキングも120位から190位の間を、魚のようにうろうろとしています。
肝心の釣り番組ですが、スカパー!の『釣りビジョン』という専門チャンネルや、20年以上続くテレビ東京系の『釣り・ロマンを求めて』、毎回様々なゲストと釣り名人が、一つのテーマに沿って釣りをする、NHKの『にっぽん釣りの旅』などが放映されています。
また2009年版のレジャー白書によれば、釣り人口は国民11人に約1人、道具を使うスポーツの人口部門では、ボウリング・野球に続き3位にランクインしています。さらに男女別の釣り人口では、男性は50代、女性はなんと30代の人口が最も多くなっています。歴史好きの女子『歴女』に続き、釣り好きの女子『釣女』が現れる日も近いかもしれません。
『Gガイドモバイル』ユーザ検索ログデータより 集計期間:2010/4/1-4/30