1980年朝日新聞社入社。長野、千葉支局を経て社会部員(東京、大阪)、ニューヨーク特派員、東京社会部長代理、名古屋報道センター長、東京編集局長補佐・写真センターマネジャー。2008年12月に新ポータル準備室長、2009年4月から現職。1992年に「メディア欄創設」で新聞協会賞。著書に「NHK」「沖縄報告」など。
インターネットの普及で、「情報価格のダンピング」が起きている。様々な情報に自在にアクセスできるようになった今、人は、以前に比べて情報にお金を払わなくなった。その影響を大きく受けているメディアの一つが「新聞」。活字離れとともに、30代以下の若者の新聞閲読率は年々減少傾向にある。一方で、不況と広告主の脱マスメディア化により、広告収入も減少している。そんな現況を、どう打開しようとしているのか。朝日新聞社のコンテンツ事業センター長、佐藤吉雄さんにお話をうかがってみました。
―ここ10年、オンラインメディアの台頭とともに、新聞を取り巻く事情が大きく変わりました。新聞というメディア自体の価値は変わったのでしょうか。
私はそうは思っていません。メディアの価値というものは、それがオンラインかオフラインかではなく、発信される情報の「中身」で決まります。私たちが持っている「中身」は、質、量ともに依然として他のメディアに負けないと自負しています。例えば、朝日新聞は、ほぼすべての記事を自分たちで取材しています。町の運動会から戦争現場まで。それを40ページほどに編集して、毎日約800万部、玄関先にお届けしている。ビジネスとしての優位性はかつてのようにはいかなくなりましたが、メディアとしての価値が変わったわけではないと思っています。しかし、人口も世帯数も減って行き、ネット時代に育った人たちがやがて多数派になる。予想を超えたスピードで起きている変化にどう対応するのか、試行錯誤しながら自分たちを見つめ直しているところです。
―問題は、コンテンツ自体よりも活字という表現方法にあるように思うのですが。実際、活字から離れる若者を中心に「新聞離れ」が進んでいるのも事実です。
まず一ついえるのは、全国、全世界に散らばる記者たちが取材した、あり余るほど十分な記事というリソースを、デジタル化する準備を私たちは怠っていたという事実はあると思っています。もっと早く予測できたら、活字の世界で築き上げたプラットフォームと同等のものを築けたかもしれません。しかし、インターネットが台頭しはじめた当初、それでも私たちのほうが情報プラットフォームとして上であろうという自負があったのでしょう。実際ここまでデジタルメディアが力を持つようになってみて、大きな問題は、「情報には値段がある」という認識がネット社会では希薄すぎる点です。「ニュースはただ」なんていうことが起こりえるとは思わなかった。人も取材費もかかった正確な情報も、全くお金のかかっていない不正確な情報も、一緒くたに垂れ流されているという現実があります。「コンテンツは無料」ではジャーナリズムは成り立たない。多彩なメディアに向けて質の高い情報を届けるには、さらにコストがかかる。その収益をどこから上げるのか。これがいま、私たちに突きつけられている重い課題です。
―活字コンテンツとデジタルコンテンツは、やはり、相容れないものなのでしょうか。
相容れない部分はあると思っています。たとえば、私たちの側は、間違いのない正確な情報を、あまねく人々に、いち早く届けることに専心しています。一方、デジタルの世界では、不正確な情報かも知れないけれど、それを読みたいという人の数だけ、実に様々な情報がしかも相当なスピードで飛び交っています。コンテンツに対する考え方が違うのです。この「正確な情報を、あまねく人々に」のためには相応のコストがかかります。新聞社にとって、取材、記事制作と配達にかかるコストが、最もインパクトがあります。「時間を金で買っている」のです。それを見直すべきではないかという議論もあります。高コスト体質の見直しは必要ですが、やり過ぎると新聞が新聞でなくなってしまう。手をこまねいているわけではありません。デジタルコンテンツ化に対しても積極的に動いています。
―その一つが、御社とテレビ朝日とKDDIとの提携事業である「EZニュースEX」ということですね。「EZニュースフラッシュ」は無料で配信されていますが、今度の「EZニュースEX」は有料配信にしました。そこにはどんな意図があるのでしょうか。
ニュースEXは動画や娯楽情報も満載していますが、お金をいただく代わりにより早く、より豊富な情報を伝えるというコンセプトです。「ニュースはただ」への挑戦でもあると思っています。1000万会員を目指しているのは、たくさんの若い人たちに新聞の記事を読んでいただきたいと思うからでもあります。今の世の中、「情報は無料で手に入る」という感覚があります。しかし、ジャーナリズムとは、玉石混淆の情報の中から「正しく確かな情報」を精査して届ける行為で、コストが質にかかわるのです。新聞はそこに月額数千円を払っていただいているのだと思っています。エピソードを二つ紹介します。一つは87年の暮れ、バブル勃興期の銀行のディーリングルームを取材したときです。最先端だったリアルタイムの電光ニュースを見ながら、ディーラーは「怪しい情報もありますけど、ニュースは間違いでもいいんです、それで相場が動けばね」と話しました。いま思えば感慨深い。二つめは99年の茨城県東海村での臨界事故。社会部デスクとして連日、紙面のほとんどを使って報道しましたが、駅売りはすぐ完売し、電車でも街中でも、驚くほどよく新聞が読まれました。「新聞は、正しい情報は、ライフラインだ」と思いました。質の高いジャーナリズムとネット時代のビジネスをどう両立させるのか。悪戦苦闘しています。
―本日は、たいへん興味深いお話をいただき、ありがとうございました。
気になるテレビ語 groovy word on TV 『ドラフト会議』
「ドラフト会議」とは日本のプロ野球において、新人選手を獲得するために行われる会議のことです。9月のアクセス数がたったの3だったのに、「ドラフト会議」が行われた10月には、なんと8719にアップ!その理由は今年の「ドラフト会議」が、例年になく「特別」だったことにあると思います。数年ぶりのTV中継、史上初開催の「公開ドラフト」。そして、最大の理由は超高校級左腕「菊池雄星」君が、何球団から指名を受け、どの球団が交渉権を得るのか?過去最高の8球団以上の1位指名を受けるのではないか?ということが注目されていたからではないでしょうか。結果、彼は6球団から1位指名を受けて「埼玉西武ライオンズ」への入団が決定しました。ちなみに「菊池雄星」のアクセス数は9月が71、10月が402とこちらもジャンプアップしています。
『Gガイドモバイル』ユーザ検索ログデータより
集計期間:2009/10/1-10/31 順位:46 位 アクセス数:8719