ポータルサイトとして、コンテンツアグリゲータとして、日本では揺るぎないポジションを築いた『Yahoo! JAPAN』。 ソフトバンクの携帯電話事業展開、Googleの台頭、ゲーム機等通信端末の多様化、放送のデジタル化…といった激動の時代の中で、巨人『Yahoo! JAPAN』は、いったい何を考え、どのような方向に進もうとしているのだろうか。オフラインコンテンツとオンラインコンテンツの連携・融合ということにテーマをしぼりつつ、『Yahoo! JAPAN』および今後の通信業界の短中期的な展望について、ヤフー株式会社で携帯コンテンツやヤフー・ニュース等をプロデュースし てきた川邊健太郎さんにお話をうかがってみました。
-ポータルサイトとしてのYahoo! JAPAN は、今後どの ような進化を考えているのでしょうか。
いまのキーワードのひとつは、「オープン化」ということ です。Yahoo! JAPAN 内ですべての情報やサービスを提供する必要はなく、外のサイトにもどんどんリンクさせてい こうという考え方です。少し前までは、できる限り Yahoo! JAPAN 内で提供する情報やサービスを充実させ、 ユーザのYahoo! JAPAN 滞在時間を少しでも長くしたいという考え方でしたが、それが少し変わってきたというこ とです。理由は、お客様メリットの追求ということに尽き ます。ユーザは、Yahoo! JAPAN の情報やサービスを望ん でいるのではなく、Yahoo! JAPAN を通じて全世界の中から自分が欲しい情報やサービスを望んでいるわけですから。 たとえば、いま私が関わっている『ヤフー・ニュース』では、〈記事内リンク〉を始めました。今までは、記事のテ キストだけが掲載されていたのですが、記事内からさらに他のサイトの関連記事や写真、データ等にリンクするよう になっています。
-この『G-PRESS』本年2月号でGoogle の方にインタビューをした際、Google のミッションは「世界中の情報 をオーガナイズして、世界中の人々に届けること」だとおっしゃっていました。それと比べて、Yahoo! JAPAN は、 どう違うのでしょうか。
使命としては、私たちもGoogle さんと共通のところはあ ります。そもそも、インターネットの本質は「ハイパーリンク」ということですから。ただ、Google さんとの違いは、 「私たちは手足が長い」ということでしょうか。たとえば、お客様が検索した後、どこまでフォローしてあげるか、そ のお客様が欲しい情報にたどり着くまでどこまでナビゲートしてあげるかという点で考えた場合、私たちのほうがサ ービスに対する保証範囲が広いと言えると思います。「お客様のユーティリティを上げることが価値を高めていくこ とである」という考え方では、Google さんも私たちも同じでしょうが、対象としているお客様の範囲が違います。 私たちは、老若男女問わずあまねく人たちに対するユーティリティを考えているという点では、比較的マスメディア に近いかもしれません。
-「放送と通信の連携」という点について、両者のボーダー は今後どのように変化していくと思われますか?
どんどんボーダーレスになっていくと思いますね。といい ますか、私たちがボーダーレスにしていくというのではなく、勝手にどんどんそうなっていくと思います。最近の「動画 コンテンツ」のブレイク状況を見ればわかるように、連携や融合、分離とかいう現象は「世の中の必然的なムーブメ ント」として起きていくことですから。私たちは、あくまでお客様が望むことを提供することが使命ですから、たと えば「放送と通信の連携」という現象によって、お客様に新しい要望・需要が生まれれば、それを満たすようなサービス を追及していくということです。御社が提供する電子番組表、『Gガイド』もそのひとつと言えるでしょう。「インターネッ トでテレビ番組情報を手に入れたい」というお客様の需要は必ずあるわけで、だから、御社の提供するサービスにも 積極的に取り組んでいきたいと考えているわけです。
-ボーダーレスになっていく放送と通信。とはいえ、それ ぞれに「得意」「不得意」というものがあると思いますが。
そうですね。通信が、現状「得意」だといえるのは、〈検索〉 と〈インタラクティブ〉です。〈検索〉という機能の結果、ロングテールといったそれまでなかった情報価値を持つコ ンテンツやビジネスが出現しました。〈インタラクティブ〉という機能の結果、ブログをはじめとする「ソーシャルメ ディア」といったものが出現し、大きな影響力を持つようになりました。この2つの機能においては、現状、通信が 得意としていますが、あくまでも「現状」です。すでにワンセグ携帯やゲーム端末等で起きているように、これから、 放送と通信は、コンテンツ面でどんどん連携・融合していくでしょう。私たちも、これからは、放送メディアのよう な「プッシュ型」のコミュニケーションも強化していきたいと考えています。また、単に存在する情報を提供するだ けでなく、そこに「インテリジェンス」「カスタマイズ」といった価値を加えていくことも求められており、このことは、 いわゆる〈編成〉〈編集〉といったオフラインコンテンツが行ってきたコンテンツプロデュースに近いことです。「こ れはオンラインで、これはオフラインで」などと言っていられなくなる時代が、すぐそこに来ていると思います。
-本日は、貴重なお話をありがとうございました。今後とも、 パートナーとしてよろしくお願いいたします。
こちらこそ、よろしくお願いいたします。