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2007.January | vol.45

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テレビの価値を、あらためて問う。

株式会社電通
テレビ局 エグゼクティブ・プロジェクト・マネージャー

髙田 佳夫さん

2007年。明けましておめでとうございます。今年も、Gプレスは、放送と通信をテーマにした「熱い議題」を皆さんにお届けしていきたいと思います。ひきつづき、よろしくお願い申し上げます。今年の第1回目のインタビューは、株式会社電通テレビ局エグゼクティブ・プロジェクト・マネージャーの髙田佳夫さん。今、広告業界でその動向が最も注目されている「テレビ」。戦後以来、広告ビジネスの中枢でありつづけた「テレビ」は、放送と通信の連携が進む中、今後どのような進化をとげていくのだろうか。インターネットという新たなメディアが及ぼす影響を、広告業界の心臓部ともいわれる〈電通テレビ局〉はどのように考えているのだろうか。私たち株式会社 IPGの初代社長でもある髙田佳夫さんにうかがってみました。

―昨今、「テレビの価値が変わりつつある」という声 がありますが、髙田さんはどのように考えられてい ますか。

端的に言えば、「絶対的なものから相対的なものに変わった」 ということだと思います。昔、少なくとも10 年前くらいまでは、テレビが学校や会社の話題の中心でしたよね。そ れが、今はそうでもなくなった、ということです。理由は明白で、私たちの生活の中にテレビ以外の「楽しみ」が増 えたこと。ネットもあれば、ゲームもあれば、携帯電話もあるわけで。とはいえ、テレビの価値が下がったというこ とではありません。DVDレコーダーの普及等の影響もあり、実際、テレビの全体視聴時間は以前と比べて減っていませ んし、楽しみの選択肢が増えた分、視聴者は「より積極的な態度で」テレビを見るようになったといえるでしょう。

―インターネットが普及して以来、情報のチャネル が一気に多様化しました。「テレビ」と「ネット」を、 対立の図式で捉える方も世の中には多いようですが、 どうお考えですか?

私は、対立という考え方はしていません。共存できると思 います。といいますのは、やはり、テレビとインターネットとでは、そこに載るコンテンツや情報の「質」が明らか に違います。そのひとつに、マスメディアとしての影響力という点で、インターネットはまだまだテレビには及ばな いと思います。たとえば、ある流行や情報がネットでドーンと広まるようなケースでも、その発信源はたいていテレ ビだったりします。つまり、テレビは情報の〈扉〉なんですね。〈扉〉を開けて、おっと思って、その先どんどん知 りたいと思ったらネットに行く―テレビとインターネットは、そういう〈補完関係〉にあり、これからもますます そういう関係が強まっていくのではないでしょうか。それともうひとつ、テレビとインターネットの大きな違いは、 テレビには「マスメディアとしての使命」があるということです。つまり、そこに載るコンテンツは、「絶対的に信 頼できる」コンテンツでなくてはいけません。極端に言えば、ネットの場合、ある個人のブログに書かれてある情報 は「全くのウソ」であるかもしれませんが、でも、それを信じるか信じないかは〈受け手側〉に委ねられます。テレ ビの場合、そうはいきません。そこにウソや裏切りがあってはいけません。だから、番組での「やらせ」は御法度で あり、オンエアされるCM に関しても厳正な「考査」が必 要なのです。

―なるほど。「信頼できるコンテンツを提供するメディ ア」という点では、テレビは、今も昔もそしてこれ からも変わらない価値を持っているといえますね。

そうです。それこそが、「テレビの価値」の本質だと私は 思います。「良質なコンテンツ」を作りつづけること-私 たち広告会社は、放送局と一体となってこのことを守りつ づける使命があります。

―髙田さんから見て、テレビ番組の「質」は、昔と 比べて変わりましたか?

私見ですが、正直、昔と比べてどうかなぁと思います。た とえば、ニュース番組がワイドショー化したり、バラエティ番組が画一化したり・・・・・・そんな傾向が否めませんね。 この間も、あるニュース番組を見ていたんですが、エンタメコーナーでタレントさんが、自分のゴシップ報道につい て延々と話していました。視聴率という点でいえば、その方が数字は稼げるのでしょうが、ちょっとなぁ・・・とい う気がしましたね。テレビの本質的価値である、「信頼」とか「独自性」とかいう視点が少し欠けているのではない かと思います。

―そういう現象の原因のひとつに、「視聴率」という 問題がありますよね。良質な番組づくりと広告ビジ ネスとは、摩擦を起こさないのでしょうか。

私は、摩擦はないと考えています。なぜなら、良質な番組 か否かは視聴者が審判を下すものですから、「視聴者に支持されたコンテンツを広告主が支持する」というビジネス の前提が変わらない限り、そこに摩擦は起きないはずだと考えています。ただ、視聴率を上げる「やり方」が、昨今 少し歪んだ方向に行っているのではないか、という懸念はあります。それが、先ほど申し上げた「ニュースのワイド ショー化」「バラエティの画一化」といったようなこと。広告クライアントは、いくら数字が上がったからといって 「ワイドショー化したニュース番組」を支持しているわけでは決してないはずです。そのへん、私たち電通テレビ局 も基本に立ち返って考え直さなくてはいけないと思います。

―広告会社と放送局が一体となって再構築していく べき課題といえますね。

そのとおりです。私たちは「生活者が、どうテレビを見て いるのか」を常に考え続ける必要があります。そして、そ れを、広告会社は、広告クライアントに対する良質なサー ビスに、放送局は視聴者に対する良質な番組づくりに繋げ ていかなくてはなりません。

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