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Gプレスインタビュー

2013.February | vol.115

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テレビの新時代は、もう始まっている。新しいツールと一緒に。

よみうりテレビ  プロデューサー
テレビ演出家

西田 二郎 さん

にしだ・じろう
1989年読売テレビ放送株式会社(以下、よみうりテレビ)入社。「11PM」「EXテレビ」を経て1998年制作会社「ワイズビジョン」に出向。あまたの放送局と番組を制作。2002年よみうりテレビに戻り、東京制作局チーフ・プロデューサーとして「ダウンタウンDX」を演出するほか、最近希薄になりつつある人とのつながりをテーマにソーシャルな展開で関西で話題の「ガリゲル」を演出。

地上波放送のデジタル化、スマート端末の普及は、テレビ番組とオンラインメディアとの共存共栄を促している。一部のテレビ番組では、今まであまり縁がなかったインフラやメディア、コンテンツとの連携を積極的に進めており、テレビ番組にも「ボーダレス化」の波が押し寄せている。この波をどう迎え、新たなチャンスをどう創出していくべきなのか。『ダウンタウンDX』等のヒット番組を手がけてきたよみうりテレビプロデューサーの西田二郎さんの講演をリポートしました。(2013年1月28日電通ホールで行われた講演より)

よみうりテレビプロデューサー西田二郎さんの講演より

―少し前までテレビとは相対するメディアとみられていた「ソーシャル・メディア」に対して、西田氏が取り組んできたこと。

 今はだいぶ状況が変わってきましたが、ほんの少し前まで、テレビ局は、ツイッターやフェイスブックに対しては、非常に慎重な姿勢をとっていました。私は、ソーシャルメディアが自分らに何かポジティブな化学変化をもたらしてくれるのではないかと「直観」し、3年前から関西発信で、今では地方に広がっている「ガリゲル」や、『ダウンタウンDX』のツイッターを始め、今や12万人を超えるフォロワーを抱えています。しかし、最初からすべてがポジティブに進んだわけではありません。ツイッターをやりたいと会社に話した時は、「ほんま大丈夫か?」という懸念される反応の方が多かったと思います。それでも、「西田二郎個人としてやりますから。」と言ってはじめた最初のつぶやきは……何のレスポンスもないんです。ボケもつっ込みも無し(笑)。一応それなりにヒット番組を作ってきた自負はありますから、自分が世の中に発信した事が何の反応もないなんて数十年間経験した事がないわけで、すごいショックでした。とまぁ、そんな状態から始まり3年経ち、12万人を超え、みんなから「ひとつのメディアだよね」とよく言われますね。会社も、ソーシャルの向き合いを理解してくれて、今では、会社の公式ツイッターにまで成長しました。僕はそこまで見守ってくれたよみうりテレビという会社は、素晴らしい会社だと思っています(笑)。

―テレビ局は、ソーシャルメディアとどのように向き合うべきか。3年間の取り組みを通じてわかったこと。

 手前味噌ですが、よみうりテレビは本当に素晴らしい会社です。なぜなら、結局、3年間も私を泳がせてくれたわけですから。どこかで「大丈夫か?」と危惧しながらも、「西田はやっていいこととまずいことの境目はわかっているはず。だから、本人がそこに何らかの可能性を感じているのであれば、しばらくは様子みてみよう」と私に委ねてくれたんですね。自分も、会社がそういう風に委ねてくれている心意気がわかっているから、決してへたなことはできないという気持ちになる。そういう暗黙の信頼関係があったからこそ、「未知のもの」を「育てる」ことができたわけです。
 私感ですが、この「未知のものを育てる」という意識や意志が、テレビ局という企業には一般的に薄すぎる気がします。そもそも60年前はテレビ局そのものも「未知のもの」だったわけですが、私たちの先輩たちがそれを育てたおかげで、今やすっかり「出来上がったもの」になった。すると、「出来上がったものを守る」仕事をしがちになり、「未知のものを育てる」仕事をしなくなってしまう。それでいい時代はいいのですが、今テレビがおかれている状況は、それでいい状況ではありません。ソーシャルメディアとの向き合い方が、その典型でしょう。よく「ソーシャルは、まだよくわからないからなぁ」と言う人がいます。よくわからないから「やらない」のか、よくわからないからこそ「やる」のか。そこが、大きな分岐点になると思います。

―西田氏が、電子番組表(EPG)に大きく注目する理由。

 3年前にツイッターを始めた自分にとって、それを凌ぐ大きな可能性を「直観」したのが電子番組表(EPG)です。昨年、IPGのセッションに参加させていただき、『Gガイド』というサービスの詳細をはじめて知り、このプラットフォームは成長したらすごいことになるな、と思いました。今まで私たちが持っていた境界や限界を超えていくツールになる、と。ネットとローカル、地域と地域、系列間の垣根、メディア間の垣根……そういったものがすべてボーダレスになり、「いい番組がきちんと視聴者に届けられる」しくみが作っていける大きな可能性を持っている。私たち番組制作者にとっては、こういうプラットフォームを待っていた!という感じです。それから、「ダウンタウンDX」を中心とした私たちとIPG社との協働が始まりました。これからいろんな新しい試み、未知なる試みに挑んでいくつもりですので、みなさん楽しみにしていてください。

―本日はお忙しいところ、貴重なお話をありがとうございました。


CES2013リポート


CESは、全米家電協会(CEA)が主催し、毎年1月に開かれるBtoBショー。全世界の主要家電メーカーが集まり、ここに行けば世界の家電市場が見えます。今年のCESのトピックスは、マイクロソフト、アップル、グーグルのビック3が不在のCESであったこと。すなわち、ハードメーカーの色合いがより濃くなったことです。その中で存在感を示していた企業は、昨年までと相変わらずサムスンでした。サムスンの存在感は、そのまま、彼らが世界市場を席巻しようとしているスマート端末の存在感になっています。アメリカ、韓国では、スマートテレビ、スマートフォン、タブレットは、もはや完全に「あたりまえの端末」。テレビとタブレットの境目がほとんどなくなっていますし、ともない、NETFLIX等のオンライン番組配信サービスも「あたりまえのサービス」になっています。その点、日本は遅れをとっている感は否めませんでした。スマートフォンの普及率でもアメリカや韓国に比べてかなり低い数字ですし、テレビ端末のオンライン化もなかなか進みません。ただ、いずれにせよ、スマートメディア化の波は止められませんので、日本もそこに追随していかざるを得ない状況であることは確かだと思います。


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