• シェイク!Vol.7 「2017年 これからテレビはどうなっていく?」(1)<br>藤井琢倫(AbemaTV編成制作局長)×野村和生(FOD事業執行責任者)×遠藤諭(角川アスキー総研取締役主席研究員)

シェイク!Vol.7 「2017年 これからテレビはどうなっていく?」(1)
藤井琢倫(AbemaTV編成制作局長)×野村和生(FOD事業執行責任者)×遠藤諭(角川アスキー総研取締役主席研究員)

異なる業種で活躍する3人がそれぞれの視点で語り合い、新たな価値観を生み出すヒントを見つけるトークセッション「シェイク!」。第7回は、株式会社AbemaTV編成制作局長の藤井琢倫さん。フジテレビでFOD(フジテレビオンデマンド)の事業執行責任者を務める野村和生さん。そして角川アスキー総研取締役主席研究員の遠藤諭さんの3名が登場。
「2017年 これからテレビはどうなっていく?」をテーマに話し合った。今回はその模様を全4回シリーズでお届けする。

遠藤

本日は、「2017年 これからテレビはどうなっていく?」ということでゲストをお二方お招きしました。ぼくがちょうど去年60歳。2013年2月1日に日本のテレビも始まってから60年経ち、人間で言うと還暦をとっくに過ぎてしまっています。メディアそのものがネットによって相当変質していますし、人工知能なんかも出てきている。このあたりでテレビが大きく変わるんじゃないかと思っています。

技術といえば、去年の5月に明治の終わりから戦時中の技術資料を大量に見る機会がありました。そのとき見て観ていて思ったのは微分方程式の影響力の大きさです。微分方程式ができたことで、ガソリンエンジンもできたし弾道計算もできるようになったし核開発もできるようになった。相当に汎用性の高い技術だったんですよ。

実はディープラーニングが当時の微分方程式と同じくらい汎用性の高い技術なんです。何にでも応用ができます。それくらいインパクトのあるこの技術で世の中が変わっていく中、テレビが変わらないわけがない。きっとそんなに時間もかからずに世の中もテレビも変わっていくと思います。

今日お呼びしたお二方は、テレビ業界の中でも新しいことをやっていらっしゃるので、これからの変化の兆しを聞くことができるかなと思っています。それでは、野村さんから自己紹介を兼ねて仕事の紹介をお願いします。

見逃し配信の視聴データや、電子書籍・雑誌配信の購入データを分析

野村

フジテレビオンデマンド(以下、FOD)という事業をやっております野村と申します。よろしくお願いします。北海道生まれで、1997年にNTTドコモに入社し、ワンセグを担当していました。緊急地震速報を携帯電話に届けるという技術の特許は当時、私が出しました。その後フジテレビに転職して、現在は※+7(以下、プラスセブン)の担当をしております。

※フジテレビで放送されたドラマやバラエティから、選りすぐりの番組を放送終了後から最大7日間無料で見ることができるFODのサービス。

今日は、性年月・性別・郵便番号など独自にFODが取得している視聴者属性の最新のデータを持ってきました。そこから分かることと、FODというサービス紹介をしていきます。

まず、月9ドラマの視聴率が最低を更新したというニュースが出ていますが、実はキャッチアップ放送(見逃し配信)では、この月9ドラマが過去最高の数字をたたき出しております。しかも毎週更新。データを見てみると、20歳-22歳とその下の17歳~19歳の女性(女子高生と女子大生)が全体視聴者の5割くらいで、男性はほとんど観ていません。日本の人口ボリュームではF2以上が多いはずなんですけどその層があまり観ていない。

そこで、その理由を分析しようとTwitterを見ていると「タワーマンションに住んでアナウンサーとの出会いみたいなのはリアリティがない」という意見がありました。確かに私たちの世代が観ると月9ドラマにリアリティは感じられないかもしれませんが、データを観ていると10代後半から20代前半の夢のある世代にとってはグサグサ刺さっているというのが分かります。

さらに、あるとき女子高生にFODの話をする機会があったのですが、そのときに『好きな人がいること』(2016年7月~9月放送の月9ドラマ)を観ているかどうかを聞いたらなんと全員が観ていました。ということは、このドラマに関して言えば女子高生の少なくとも80%以上は観ているんじゃないか。翌日、学校で『好きな人がいること』が話題になっているレベルだと言い切れると思いました。ただ他の層にはあまり響いていません。

『好きな人がいること』もそうですし『恋仲』(2015年7月~9月放送の月9ドラマ)もそうでした。 この傾向はフジテレビの課題でもあるのかもしれません。ただ、『いつかこの恋を思い出してきっと泣いてしまう』(2016年1月~3月放送の月9ドラマ)は結構広い層に観られていましたし、そのうち、F2層、M層に広がる見せ方を発見していくでしょう。月9ドラマはこのキュンキュン路線を突き進んでいくと良いんじゃないかと思います。

さて、スライドを見ていきます。

F1層、F2層が多くて、男性は50歳くらいが多いのがフジテレビの番組の平均的な分布になります。また、水曜深夜でFODのオリジナルドラマ(『クズの本懐』や『ラブホの上野さん』)を地上波で流しているのですが、これも同じよう分布になっています。そう考えると、今の月9ドラマはFODの配信と相性が良いことが分かるかと思います。

もちろんF1層、F2層ばかりでなく、最近人気が出てきた『全力!脱力タイムズ』は男性にすごい人気ですが、やはり他の番組についても見てみると、やはりフジテレビは女性のティーンズとF1層の低いところに刺さっているということが分かります。

こうやって分析したデータをどうするかというと、広告素材の出し分けに利用できます。「クリエイティブマッチ(性・年代別)」や「エリアマッチ(地域別)」と呼んでまして、既に実装は完了済で現在、テスト運用をしています。この機能を使えば、複数の商材を扱っている場合は、同じ予算でより効率的に出すことができるようになります。

電子書籍もやっています。いま取扱冊数が15万冊を超えて、電子書籍の書店としては日本有数の規模に育ってきています。例えば、おととしの月9のドラマ『恋仲』のコミカライズはFODで配信していて、まだまだ連載が続いています。ほかにもいろいろありますが、将来的にはFODオリジナルのマンガを映像化していきたいと思っています。

電子書籍の販売データなど生のデータを持っていると良いことが多いです。いまドラマ化・アニメ化ができるような原作マンガの青田買いが激しくなっていて。その兆しを発見する参考になります。

ほかに80誌くらいが読み放題の雑誌配信サービス(どのコースに入っても利用可能。一番安いコースは月額300円)や、電子書籍事業の認知拡大用オリジナル番組もやっています。

オリジナルコンテンツも頑張っています。配信でしか観られない番組を作ることでFODのブランド力を上げることが目的です。Netflixが2017年に1000時間番組を作ると言っていたのですが、日本のいちテレビ局の一部門であるFODが2016年で166時間を作ったというところはすごいんじゃないかと思っています。クオリティの高いストックコンテンツ(=色あせないコンテンツ)を量産。どんどんオリジナル番組の発表もしていきたいと思っています。

VR番組も作っています。第一弾として『VRアイドル水泳大会』を制作しました。ロケットニュースさんが非常に良い記事を出してくださって、人気のコンテンツとなっております。

フジのVRアプリ「FODVR」のオリジナルコンテンツがヤバい!『360°まる見え! VRアイドル水泳大会』が激アツすぎて男性陣大歓喜ッ!! 

最後に違法動画対策について。めちゃくちゃ真剣にやっています。フジテレビの、特に放送中のドラマは検索エンジンからも見つからないようにしていますし、徹底的にネット上のあらゆるところから落としています。匿名アカウントで海賊版を出している人にも本人のアカウントを見つけ出して警告メールを送るようにしています。

有料のFODは80万人ほど会員がいますが、他サービスと比べてもサービスの質も負けていませんので迷っている方はぜひFODに入ってください。

「噂のAbemaTVの実態は、若者のための新しいマスメディア?」へつづく

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