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シェイク!Vol.13 どうしたら作れる、面白い企画 3rd(1)
伊藤隆行(テレビ東京プロデューサー)×米光一成(ライター)×佐藤ねじ(アートディレクター)
異なる業種で活躍する3人がそれぞれの視点で語り合い、新たな価値観を生み出すヒントを見つけるトークセッション「シェイク!」。第13回は、株式会社テレビ東京の『モヤモヤさまぁ~ず2』そして最近では『池の水をぜんぶ抜く』が大反響を巻き起こしている伊藤Pこと、伊藤隆行さん。『ぷよぷよ』の生みの親でも知られているゲーム作家でライターの米光一成さん。そして面白法人カヤックを独立され2016年7月に株式会社ブルーパドルを設立。現在アートディレクター/プランナーとして活躍されている佐藤ねじさんの3名が三度目の登場。『池の水を全部抜く』からいろんな動きが起こっていたり、米光さんは新しいゲームを考案中だったり、佐藤ねじくんも新たな企画をどんどん立ち上げていて、本当にいろんな企画にまつわる話題が詰まった回になった。その模様を全5回シリーズでお届けする。
池の水を抜いてるうちに仕事の質が変わってきた
こんちわーっす。
どうも。
こんにちは。
みんな雑に入ってくる(笑)。
なんか、服おそろいみたいじゃないですか(米光と見比べて)。
白のTシャツでね。
『DEATH NOTE』のLみたい(笑)。さて、シェイク第13弾です。13回のうち3回がぼくたち3人っていうね。
このメンバーも3回目かあ。
なぜ3回も呼ばれているんでしょう。
ふわー知らなーい。呼ばれてるから来てる。
テーマは「どうしたら作れる面白い企画」です。ではまずは自己紹介をねじくんから。
ぼくはウェブを中心にデジタルコンテンツを作っている佐藤ねじと申します。職業はデザイナー兼プランナーで、テクノロジーを生かしたアイデアを日々考えています。テクノロジーをあえて、あまり使われてない場所に持ち込むのが好きです。
最近だと「5歳児が値段を決める美術館」とかね。
子供が生まれてから毎年、子供がその年齢でできることとデジタルの技術を組み合わせた作品を作ってるんですね。今年は、ECサイトをわざわざ子供用に作り、子供が4、5歳のときに作った工作物を、作品名・値段・解説を本人につけてもらって販売しました。
値段のつけかたがめちゃくちゃなんだよね。落差がすごいの。
9億数千万円とか、152円とか。お金の価値観がまだ定まってないかんじが面白くて。それをECサイトのフォーマットで出すと違和感が生まれる。大人の常識とはぜんぜん違うものが浮き彫りになるんですよね。けっこう話題になって、テレビでも紹介してもらいました。
ほかにも、漫画の内容がインタラクティブに変わっていくやつ。
資生堂の広告で「みんなの編集(メイク)で変化する恋愛漫画(http://comic.ie.shiseido.co.jp/story01/edit.html)」を作りました。今は画像が縦に積まれてスクロールするものをウェブ漫画と読んでいるけど、その先があるんじゃないか。本来のウェブの技術を使って、かつそれが漫画の表現にもなっている、そういうものを作れないかなと思っていたんです。資生堂のその漫画は、コマの一部、たとえば男女のキスの距離とかをスライダーでいじってカスタマイズできるんです。で、みんなが選択した距離の平均値が、閲覧モードに反映されます。
がっちりキスさせたいのか、ギリギリのとこがいいのかを読者が調整できて。
なぜ3回も呼ばれているんでしょう。
ぼくは最初に、ディープキスにするか、フレンチにするかを選べるようにしたいって話したら、そういうことじゃないって言われましたね(笑)。求められているのは胸キュンだと。
ディープは胸キュンじゃないと。つかず離れずがいいんだ。
ほかにも、少女漫画って背景に花が散ってるじゃないですか。そういう背景の種類を選べるようにしようっていって、ちょっと面白いやつも入れようとしたら、そういうのはいいですと。
ネタは求めてないと(笑)。
企画術の話でいうと、自分のなかの面白いと思うものを女子の気持ちに当てていくことで、ちょうどいいバランスのものになりました。そんなかんじで、最近は女子の世界にどっぷり浸かってました。
一方ぼくは最近、池の水を抜いてますね(場内笑)。
いっぱい抜いてるねえ。
今年に入って14池目ですからね。放送は、1月からやって4回放送しました。5回目を今作ってます。
あーもう5回目なんだ。1回見逃してるなー。
そんなに見ていただいてるんですか。
見てる見てる。日曜ビッグバラエティ『池の水ぜんぶ抜く』。
去年の11月、この3人でのシェイク1回目のときに、伊藤さんは「今度、池の水抜くんですよ」って話していました。まだ抜く前だったんですよね。
周りに反対されてるときですね。
面白いことやるんだなーぐらいなかんじで聞いてたら、もう今や、みんなが知ってるようになって。
4回目を9月に放送して、11.8%の視聴率が出たんですね。『おんな城主 直虎』を超えてしまいました。
※直近で放送された11/26(日)の第五弾では12.8%を出し、さらに記録を更新。
すごいなあー。ゆうても池の水抜くだけなのにね。ぼく、あれの何が面白いのかがいまだにわからない。でも、面白い。ついつい見ちゃう。なんなんだろう。
放送が終わって一週間後ぐらいですかね、環境省の秘書官から電話がありまして。
でかい話になってきましたよ?
「大臣も非常に喜んでおりまして、ぜひお会いしたいです」と。で、会いまして、いろいろ話しました。あと、農林水産省の若手の方が7人ぐらい、勉強会をしたいということで来ました。農業用のため池は全国に20万ちょっとあって、それを管理しているのが農林水産省の彼らだったんです。農業用用水は農家のためにあります。農家のために情報発信をしたいと思っているが、役所なんでね、発信の仕方がわからないんですよね。これまでどんな発信をしてきたのか聞いたら、ため池マンを作ったと。
ため池マン! それはゆるキャラなの?
※参考:ため池マン
若手声優によって結成されたNPOメダカのコタロー劇団があって、小学校やイベントで公演しています。環境省が作って農林水産省がバックアップしているんです。主人公はくちびる川王国に住むメダカのコタローです。そのお友達が女の子のメダカなでしこひめ。メダカは日本の在来種です。で、宿敵が、アメリカザリガニのガニオン。外来種です。ガニオンが悪いことをして、コタローが「助けてーため池マーン」って叫ぶと、ヒーローため池マンがやってくる。そのため池マンがまったく浸透していない。だから話だけでも聞かせてくださいって来たんですよね。『池の水ぜんぶ抜く』の影響で、ぼく最近なんか仕事の質が変わってきましたね。これまで会ったこともない人と会うことが増えてきた。この間は、国立環境研究所の五箇公一さんと『日経エコロジー』で「池の水を抜いて分かった在来種の危機」というタイトルで対談をしました。五箇さんはフジテレビの『全力!脱力タイムズ』やNHKの番組に出たりしている、サングラスに革ジャンの昆虫博士です。
※参考:五箇公一氏
「池」というテーマを軸に、どんどん掘り下げていっている。
そんな気なかったのに。
面白いですねえ。ぼくはゲーム作家の米光一成です。今からあたらしいじゃんけんやっていい?
やりましょう!
ぼくは新しくルールを考えるワークショップを何回かやっていて、それを電子書籍化したのが『あたらしいじゃんけんをつくろう』『あたらしいじゃんけんをつくろう2』です。ここで生まれた「ちょきじゃんけん」をみんなでやりたいと思います。ふつうのじゃんけんにルールをひとつだけ足します。あいこだった場合はチョキが勝ち。これだけです。オッケーですか?
あいこだったらチョキが勝ち?
グーチョキパーがそろったらチョキが勝ちです。多人数じゃんけんだと、あいこが続くじゃないですか。その欠点が直るんです。
戦略が生まれますね、これは。
全員で何回かやって勝ち抜いた一人が勝利者です。では、全員立ってください。行きますよー、じゃんけんぽい(グーチョキパーがそろう。伊藤、佐藤、米光はチョキを出している)。あいこなのでチョキが勝ちです。チョキ以外は座ってください。
そらチョキ出しますよね。
チョキですよね。
でも試合が続くとチョキだらけになってくるから……。
そうか、いつグーを出すかがポイントですね?
第二戦、じゃんけんぽい(グーとチョキしかいない。米光と佐藤はグー。伊藤はチョキ)。
やった、グーの勝ち!
なんでパー出さないんですかー!
今日は賢い人が多い。学生とやるといつまでもパー出すやつがいるんですよ(笑)。
(戦いは続き、最終的にねじさんと来場者1人との一騎打ちになる)
二人になるとふつうのじゃんけんなんですよ。じゃんけんほい。
やったー、最後チョキで勝った!
優勝は、ねじさんです。