こまき・じろう
1983年フジテレビジョン入社。
「世にも奇妙な物語」「夢で逢えたら」映画「Love Letter」「パラサイト・イヴ」など多くのテレビ番組や映画を担当・プロデュース。CS事業部長、ペイTV担当局長、クリエイティブ事業局統括担当局長兼クリエイティブ事業映像センター室長を歴任し、2010年12月、㈱マルチメディア放送(現・株式会社mmbi)に常務取締役として出向。
アナログ放送終了後の周波数帯を活用し、スマートフォンをはじめとするデバイスでの利用を想定した新たなメディアサービス〈モバキャス〉が、2012年春、いよいよスタートする。放送のデジタル化とスマートメディアの普及という2つの画期的事象によって生まれる新サービス〈モバキャス〉は、NTTドコモをはじめとする通信業者、各放送局、電通など株主10社によってつくられた株式会社mmbiが運営する。「日本で初めての、放送業界と通信業界とのオフィシャルな融合」と評される当社は、どんなミッションとビジョンを抱いているのか。株式会社mmbi常務取締役、小牧次郎さんにお話を伺ってみました。
―〈モバキャス〉の画期性の本質は、どこにあるのでしょうか?
携帯電話という強大な双方向インフラに、放送コンテンツが初めて本格的にオンされるという点です。
「オンラインメディアにおける放送コンテンツ」という点で言えば、グーグルTVや各スマートTVなど、それなりの影響力をもったメディアはすでに存在します。しかし、それらと〈モバキャス〉との決定的な違いは、〈モバキャス〉は、スマートフォンで視聴するため、「上り(オンライン)が100%付帯されている」点です。グーグルTVやスマートTVは、オンラインに接続が完了した状態で視聴できれば、上りも下りもある「双方向」なメディアとして機能しますが、現実として、100%のユーザーがそのような環境で視聴してはいませんし、今後どんなに普及したとしても、100%になることはないでしょう。
それに対して、元々が「上り」のための通信端末である携帯電話は、ユーザーの100%が上り回線が確保されている。〈モバキャス〉の画期性のひとつは、ここにあると考えています。
―スマートフォンの普及も、大きな追い風ですよね。
今まで携帯電話は様々な進化を遂げてきましたが、スマートフォンは携帯電話というよりも「電話もできる小型PC」と考えるべきでしょう。すでに、ストック型の映像配信においては画期的な端末であるわけですが、〈モバキャス〉の誕生は、このスマートフォンの普及なしにはありえないサービスです。
―スマートフォンで放送コンテンツが視聴できるようになると、私たちのテレビ視聴ライフに、どんな変化が起きるのでしょうか。
そもそも、〈モバキャス〉で提供するサービスは、従来のテレビ放送というコンテンツにこだわっておりません。無論、普通のテレビのように、様々な放送チャンネルが楽しめるサービスも提供しますが、ゲームやグラフィックといったデジタルコンテンツを「放送波を使って送る」こともできるわけです。
また、フロー型ではありますがコンテンツの蓄積も一時可能なので、見たい放送コンテンツを、より時間と場所を選ばず自在に楽しめるようになります。つまり、〈モバキャス〉は、「放送コンテンツ」でありながら、従来の受像機で見るテレビ視聴とは全く異質な視聴体験を提供することができるサービスなのです。
―従来の受像機で見る放送コンテンツとは、どんな関係になっていくのでしょう?
両立、共存する関係です。お互いが組み合わさって新しい視聴機会、視聴体験を生んでいく関係にあると考えています。 「受像機でテレビを見ながら、〈モバキャス〉で関連する番組とSNSにアクセスする」といった視聴スタイルが確立すると想定しています。たとえば、あるテレビのバラエティ番組があるとします。その番組自体にはあまり関心がなくても、〈モバキャス〉で放送される関連番組とその番組をネタにしたSNSに参画することは楽しいと感じる人が現れるようになれば、結果として、もとのバラエティ番組の視聴者も増えることになる。そんな現象が起きるでしょう。
―あとは、スマートフォンのコンテンツの中で、〈モバキャス〉をどう際立たせていくかという点にかかってきますね。
そう思います。そして、その答えを、個人的には持っています。それは、ライブコンテンツ(生放送)です。
現在も何十万と存在するスマートフォンアプリの中で、ユーザーをワクワクドキドキさせてくれるコンテンツが、果たしてどれほどあるでしょうか?長年放送業界にいた私の感覚では、ライブコンテンツほど人をワクワクドキドキさせるコンテンツはありません。古い話になりますが、何が起こるかわからない、でも何も起こらないかもしれない浅間山荘のライブ映像に、人々は50時間釘づけになった。「オールナイトニッポン」を、毎晩目を真っ赤にしながらも聴かずにはいられなかった。つまり、ライブほど、人の心を揺さぶるコンテンツはない−これは、不変の真理だと思います。スマートフォンにおいて、そういった人の心を揺さぶるコンテンツを提供することができるのは、〈モバキャス〉しかないと思っています。
―本日はお忙しいところ、貴重なお話をありがとうございました。
気になるテレビ語 groovy word on TV
『荒川アンダー ザ ブリッジ』
荒川土手の『荒川河川敷村』に住み着くことになった大財閥の御曹司『リク』と、自称・金星人の少女『ニノ』のピュアで不思議なラブストーリ−(?)を軸に、自分を河童だと信じてやまない『村長』、元売れっ子ミュージシャンの『星』など、“超”が付くほど個性的な住人たちの「笑い」と「せつなさ」に満ち溢れた物語が『荒川アンダー ザ ブリッジ』(TBS系列 毎週火曜 24:55〜、MBS 毎週土曜 24:30〜)です。中村光の人気漫画を完全実写化したもので、なんと既に来年の2月には、映画の公開も決定しています。
放映開始が月末からにも関わらず、7月の検索数が12,033(「荒川」での検索)と多く、その要因の一つとして、とても深夜ドラマとは思えない豪華なキャスト陣の出演が挙げられます。
リク役には林遣都、ニノ役に桐谷美玲、村長役に小栗旬、星役に山田孝之(小栗旬の着ぐるみ姿と&山田孝之の被り物姿は必見!)、その他にも城田優、片瀬那奈、安倍なつみなどが、“超”個性的な住人たちを演じています。
実写化することで、視聴者に原作漫画を読んでもらうきっかけを与え、ドラマとはまた違う、作品の世界観を楽しむことができるという部分に、実写化の利点を感じます。たまに哲学的なことを言ったりする自称・河童の村長が、ソフトバンクの『お父さん犬』級にニクめなくて、いい味出しているんですよね。
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