• シェイク!Vol.7 「2017年 これからテレビはどうなっていく?」(2)<br>藤井琢倫( AbemaTV編成制作局長)×野村和生(FOD事業執行責任者)×遠藤諭(角川アスキー総研取締役主席研究員)

シェイク!Vol.7 「2017年 これからテレビはどうなっていく?」(2)
藤井琢倫( AbemaTV編成制作局長)×野村和生(FOD事業執行責任者)×遠藤諭(角川アスキー総研取締役主席研究員)

シェイク!Vol.7 「2017年 これからテレビはどうなっていく?」のシリーズ2回目は、2016年からスタートしたAbemaTVの実態について迫った。

噂のAbemaTVの実態は、若者のための新しいマスメディア?

藤井

AbemaTVの藤井でございます。今日私からは最近のAbemaTVの状況と、何を考えて運営しているのかを簡単にお話しします。

まずAbemaTVの状況から。9月で300万WAU(weekly active user)を超えました。この時期に計画的に投資して良いコンテンツを出したのでこのような結果を出すことができましたが、10月~12月はいったん落ち着いて、1月にまたWAUの数値を上げるという計画でコンテンツの編成をしていました。その結果、年末年始で500万WAUを突破することができました。

年末年始の中で一番観られたのがテレビ朝日さんの番組の『フリースタイルダンジョン』のAbemaTVオリジナル版です。いまだに一番良く観られた番組ですね。

DL数はいま1400万DLを突破しています。正直、DL数はあまり追っていないのですが夏くらいには2000万くらいになるのかなと。OSはIOSが68%、androidは32%になっています。デバイスのシェアで言うとスマートフォンが78%ですね。PC12%、タブレット10%になっています。通信環境については73%がWi-Fiで観られている状況です。

視聴者数の男女比を見ますと、男性が65%女性が35%。年齢別で見ますと一番多いのは34歳以下の男性(M1層)です。ただ、このデータはグーグルアナリティクスで出していますので18歳以下のデータが取れていません。そのため、データに表れていない18歳以下の人たちが結構いるんじゃないかと感じています。34歳以下が全体の68%なんですけど18歳以下を入れれば70%を超える。つまり、若い人が多い映像メディアになっています。開局当初はM1とF1層層が全体の20%を構成しておりましたが、コンテンツを若い人向けに調整していくことで現在のような割合に変わっていきました。

いまAbemaTVで何が観られているかというと、視聴時間で言うと約半分の45%がアニメです。その次にドラマ(韓流ドラマ等も含む)で12%。そこから順にオリジナルコンテンツ、ニュース、スポーツ、バラエティというように並んでいます。その他が19%ありますが、大半は麻雀です。麻雀チャンネルは一人当たりの視聴時間も長いですしリピーターも多い。

実はAbemaTV全体で翌週の継続率が高いのが麻雀チャンネルや将棋チャンネルです。母数で言うとアニメの視聴者数が多いですが、継続率ということになると麻雀や将棋が際立っています。コアな人が観てくれているということだと考えています。

時間帯別の視聴数を見ると、21時頃がもっとも多くて、徐々に下がっていきます。アニメの影響は強くて21時に人気アニメコンテンツを出すと、ぐっと視聴数が伸びます。

広告売上は順調に成長しておりまして12月は満稿、3月も広告枠を1.5倍くらいにしております。タイアップ広告も徐々に行っています。現時点では積極的に売上を追っていませんが1年後くらいに大きく伸ばすタイミングになるかなと。

これからのことについてです。3月から4月にかけて縦画面対応をします。また、もうひとつオンデマンド機能である「Abemaビデオ」を3月から4月にかけて始める予定です。野村さんは気にされているかもしれませんがFODさんやNetflixさんと戦う気は全くありません。

AbemaTVはリニア型なのでスワイプして放送中の番組で観たいものがないと視聴者は離脱してしまう設計になっています。そこで離脱したユーザーに向けて見逃し配信を提供します。そうすることで、AbemaTVのコンテンツに戻ってきてくれるようにするのが目的です。

ほかにもサイマル放送をテレビ朝日さんやメーテレ(名古屋テレビ)さんとサイマル放送を行いました。両方とも成功したのですが、もう少しお互いを補完できるような形をこれから模索していきたいと思っています。

※ サイマル放送(サイマルほうそう、simulcast、simultaneous broadcasting)とは、同時並行放送のこと。 1つの放送局が同じ時間帯に同じ番組を、異なるチャンネル(周波数)、放送方式、放送媒体で放送すること。

最近は緊急ニュースというチャンネルを何かが起きるたびに新しく作るようにしています。アメリカ大統領選挙の選挙の時や災害の時などです。緊急時にはチャンネルを作ってどこよりも早く情報を出そうという姿勢を持ってやっています。その結果として緊急ニュースがあるときは視聴者数が一気に伸びるようになりました。通常時のニュースチャンネルのシェアが10%~15%程度なのですが、緊急ニュースがあるときは約50%になります。

4月にオープンして、いま10か月目くらいですが、最初の半年間はクオリティの高いコンテンツで24時間の枠を埋めることやストレスがない使用感のための機能の実装などで精一杯でした。ですが、いまはそこから少しレベルアップして、戦略的なコンテンツ編成やサイマル放送へのチャレンジ、テレビデバイス視聴へのチャレンジ、再来訪者を増やすための施策といったことができるようになりました。これからはオリジナルコンテンツに力を入れていきます。これが上手くいかない限りAbemaTVの大きなヒットはないと思っているのでチャレンジしていきたいです。

AbemaTVには約30チャンネルあるのですが、ぼくたちがなぜこんなに多くのチャンネルを作っているかというと、ネット上でマスコンテンツを作る難易度が本当に高いということに気付いたからです。インターネットにコアな情報がいくらでも転がっている中で、マス向けのだれでも見ても楽しいような情報を提供してもユーザーからすると物足りないんだと思います。

それよりも、例えば将棋なら将棋連盟さんと組んで、コンテンツを作り込んでいくことで通な人から見ても良いと思われるようなものを放送する。そうすることで、ジャンルごとについているコアな人たちに継続的に観てもらえる。それらがまとまることで、全体としてマスメディアといえるような視聴者数になっていけるのではないかと考えています。

AbemaTVの成長イメージがこの図になります。麻雀や将棋、サッカーなど小さくても確実に観てくれるチャンネルをベースとして、母数の大きなアニメも確実にファンが集まるようにしていく。ドラマやバラエティ、ニュースについてはコアなファンというわけではないけども幅広い層の人が集まってくれます。その上にオリジナルコンテンツが何かしら当たればAbemaTVの人気が爆発するのではないかという仮説を立てています。なので、いまはベースになる趣味チャンネルやアニメのファンにAbemaTVでの視聴習慣をつくってもらうことをとにかく地道に大切にやっていくというのが僕らの戦略です。

オリジナル番組の編成についてですが、開局当初は1週間に300番組くらいを5,6人で作っているので本当に大変で、編成を埋める作業で手いっぱい。編成を戦略的に考えられる状況ではないというのが正直なところでした。ちょうど開局から1年経つ4月には戦略を元にした編成をしていこうと思っています。ニュースについては「この時間にAbemaTVを観たらこの番組をやっている」というような帯の編成をしています。

オリジナルの番組制作について、工夫ポイントとしては全員に受けなくてもいいからコアな人には受けるトンガッた企画作りを大きなコンセプトにしています。対象は若いユーザーなので若い人が好きになるだろうコンテンツを中心に作っています。

「Twitter分析から見えてくるもの」へつづく

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