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シェイク!Vol.4 面白いアニメとは何か考える(2)
那須惠太朗(サンテレビ)×片岡秀夫(東芝映像ソリューション)×森永真弓(博報堂DYメディアパートナーズ)
シェイク!Vol.4「面白いアニメとは何か考える」のトークセッションの模様の2回目。
今回は実際の視聴データからアニメのヒット作を分析した話を中心にお届けする。
ヒット作を視聴データで分析
ここからデータ分析の話に移っていきたいなと思います。私は広告会社に勤めていますが、広告会社ってクライアントさんから「タイアップしたいんだけど、どの商品が今イケてるのかな」と聞かれたり、コンビニとか流通さんだと、いわゆる「一番くじ」で「どの商品を並べたらいいのかな」みたいなことがあります。なんとなくアニメオタクが「今はこれだと思います」って勢いで言っていることが多いんですよね。「それをもうちょっとデータ化できないのか」と悩んでいたわけですが、まさに参考になるものを本日、片岡さんが見せてくださいます。東芝さんのシステムにたまっている録画および再生の視聴データを、春クールのアニメで分析したもので……。
われわれ TimeOn の視聴ログは、全国30万台ありまして。関東だけで今12万5000台くらいデータが毎日上がってくるんですね。それで何ができるかっていうと、1%の視聴率っていわゆるビデオリサーチさんは600サンプルだとすると、1パーセントは6世帯になっちゃうので、1や2世帯の変化は大差ないわけですね。ところがわれわれのデータだと、深夜アニメのように数字の差がよくわからない世界でも、1%で約1200人。0.1%の変化でも120人もいる。だから変動の意味が見えてくるんです。
(視聴者層のデータを分析したグラフをモニターに出して)「おそ松さん」の視聴者をある一定量、2話以上見たという条件で比べたときに、「Fate/stay night -UBW-」「ヘヴィーオブジェクト」と比べると
、テレビの接触時間が一番長かった。「おそ松さん」は191時間で、「Fate」は148時間、「ヘヴィーオブジェクト」は155時間。「おそ松さん」を見ている人たちはバラエティー番組もよく見ているのが分かりますし、アニメがテレビ視聴全体の8%に対して、「へヴィーオブジェクト」の視聴者は16%と倍になる。面白いのが「おそ松さん」の視聴者が見ているアニメは、「ドラえもん」「クレヨンしんちゃん」が多くて、「Fate」「ヘヴィーオブジェクト」が他に見ているアニメの1位である「Re:ゼロから始める異世界生活(リゼロ)」の視聴者は2割程度。「リゼロ」視聴は、「Fate」では44%で、「へヴィーオブジェクト」では約60%になる。簡単に言うと「おそ松さん」が一番カジュアルな層で、「ヘヴィーオブジェクト」がコアアニメ層、「Fate」がちょっとコアアニメファンより一般に寄った感じ。
このように集合の違いによる分析で、例えば「こういう作品が当たった場合、視聴者はどういうテレビ番組を見ていて、どういう時間にどういうチャンネル見ているか」なんて集計もできちゃいますし、その人たちがだいたいどういう番組を追いかけてきたのかっていうような時系列も調べられる。通常のパネル型ですと、サンプルの純度を保つために入れ替わっていくんですね。それは一つの指標としては必要なんですが、われわれのリアルデータが特異なのは、サンプルが増えていくこと。それを生かすと、過去にこの番組を見ていた集合がどう変化するのかとか、このグループはだいたいこっちを追いかけてるとか、そういうコンテンツの趣味嗜好が追っかけられるようになります。
次に、春アニメのライブ視聴と録画再生率、予約率で作品を比較したグラフです。それで、再生残留率を調べていくと、だいたい1話から折れ線グラフが下がっていくんですが、その中で異常なのは「リゼロ」ですよね。プラス方向にガンガン伸びている。こういった複数の指標を調べていくと、作品の順位が、ライブ、再生、予約で入れ替わるんですね。単純にいわゆるライブ視聴だけ、録画だけでは分からないことが見えてくる。
ライブ視聴か再生視聴タイプか、録っているだけで見ないか、つまりその人にとっては早く見たいという気持ちがおきにくい作品、最初からライブ率や再生率が低めなんだけど固定ファンがついている作品など、こういう分類で、1~3話の動きから4話以降の動きもある程度予測できるかもしれません。予約率が下がるときに、1話切りと3話切りもこのグラフから判定できます。だから1話切りされやすい作品、3話切りされやすい作品、あるいはなだらかに落ちていく作品っていう違いも分析できる。こんな感じのことをやっています。
アニメのリアルタイム視聴率は、結局「同じくらいだな」となってしまって、何のアニメが人気だったかわからない。ソーシャルの反応を見てもいつも同じ人がつぶやいているから、この人が受けてるだけなのか、みんなに人気があるのか分からないとか。あと、つぶやきがちな人が多いアニメとそうじゃないアニメがあるので、こういったデータがあると別の視界が見えてきますね。
そう。ツイート量VSライブ・再生・予約で相関を見たんですけれども、かなりの作品が「ツイートが高いけど視聴が低い」とか、逆に「視聴が高いのにツイートはあんまりされない」とか、一致してることのほうが少ないんです。
弊社のコンテンツファンを対象とした調査したデータで、たとえば「はてな」ユーザーはテレビを見ていないイメージがあるけれど、はてな、インスタグラム、ツイッター、フェイスブック……とかサービスユーザーごとに分析していったら、トップ2はだいたい「世界の果てまでイッテQ!」「ザ!鉄腕!DASH!!」なんですよ。結局「なんだ、みんなテレビ見てるんじゃん!」っていう話で。「お金を払った」という条件に絞ると、「はてな」ユーザーは美術展や博物館がたくさん上がってきて、なんとなく嗜好性が見えるんですけど、そういうふうにわざわざネットに書いていないけど見てるっていうコンテンツがテレビ周りはあるので、いろんなデータを見なきゃいけないんなあって今の片岡さんのお話でもさらに感じ入りますね。