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シェイク!Vol.4 面白いアニメとは何か考える(1)
那須惠太朗(サンテレビ)×片岡秀夫(東芝映像ソリューション)×森永真弓(博報堂DYメディアパートナーズ)
異なる業種で活躍する3人がそれぞれの視点で語り合い、新たな価値観を生み出すヒントを見つけるトークセッション「シェイク!」。第4回は、サンテレビでアニメの編成にも携わっている那須惠太朗さん、DVDオーサリング立上げやHDDレコーダーRDシリーズを手がけた東芝映像ソリューションの片岡秀夫さん、プライベートでは同人誌発行なども行う博報堂DYメディアパートナーズの森永真弓さんが登場。「面白いアニメとは何か考える」をテーマに、話題の「君の名は。」や「シン・ゴジラ」の評価、今秋オススメのアニメなどを語り合った。今回はその模様を全6回シリーズでお届けする。
白熱の議論の前に自己紹介
今日は「アニメ」をテーマにお話しさせていただきます。もしかしたら単なるマニアトークになって、暴走して終わるかもしれないんですが(笑)。
サンテレビの東京支社で編成をしている那須と申します。いろんな放送局があるなかで、なぜ私に(トークセッションの)白羽の矢が当たったのか……ということですが(笑)、高校・大学と6年間くらいプラモデル屋でずっと働いておりまして。仕入れとか店の営業もやっていたこともあり、大学の就職活動でサンテレビが受かったときに、ずいぶん引きとめられたんですが(笑)、放送業界に入りました。基本プラモデルとかが好きなので、マーチャンダイジングとアニメーションとの関係に今もすごく興味があって、アニメを担当したりしています。
東芝映像ソリューションの片岡です。私はずっとコンテンツをいかにはやらせるかをやってきまして。古くはDVDのオーサリングツールのシステムを開発して、その後RDシリーズというレコーダーを作って、善くも悪くも今の録画文化をはやらせてしまった。そのあとアプリをやって、ソーシャルでシーンを共有するとか。その流れで、「TimeOn みるコレ」というサービスでコンテンツの推薦だとかを、(東芝のテレビ)REGZAの上でやっていて。その視聴ログで分析をいろいろやるっていうのをなりわいとしているんですけど、その流れで、アニメの見られ方の分析をしています。そんな感じで、ハードメーカーにいながら、ほぼハードは事業として関わったことは少なくて(笑)。広告をやったり、ソフトを作ったり、アプリを作ったり、サービスを作ったり、データをハンドリングしたり、ほぼ製品じゃないことばっかりを東芝でやっています。
博報堂DYメディアパートナーズの森永と申します。社内で「アニメに強い人間はいないか?」となったときに、声がかかりやすかったりとか、そういう調査や案件をやっているうちに、いろいろオタクフラグが立ってですね、こういうところに呼ばれるようになりました(笑)。今日はどちらかというと、お二人の話を聞きつつ……という展開でやっていきたいと思います。
7月期アニメ何見てた?
最初に、場を温めるというわけでもないんですが、7~9月クールのアニメでどの作品を見ていたか、3人で話したいと思います。
私から導入的に話しますと、私は1話チェッカーという属性でして。1話は全作品見て、だんだん2話、3話と削っていく。物語に張られた伏線が回収されていくことに快感を覚えるタイプなので、ストーリーが面白く感じられないとあっさり切ってしまう傾向にあります。そういう中では、今季「クオリディア・コード」というアニメがありまして。マニアックですが、途中の5話くらいから作画が大崩壊してしまって(笑)、でもストーリーはめちゃめちゃ面白くて。後半になればなるほど面白かったので、伏線回収好きとしてはついつい最後まで見てしまいました。それから私は毎回、癒し枠を用意しているんですが、「不機嫌なモノノケ庵」はわりと見てました。あとは「マクロスΔ」はオタクのたしなみとして見始めたら、途中ダレてしまったんですが、最終回はやばかったですね。
僕は39本を最後まで見ていました。その中で一番気に入ったアニメは「ReLIFE」。絵柄はアレですが、物語もキャラも演出も、それから仲間たちも楽しくて、まだ見ていない人にとてもおすすめです。
ウェブコミックの「comico」で実施したというユーザー調査の内容を耳にしたことがあるんですが、いわゆる普通のコミックって、だいたい300~600円くらいの幅ですよね。一方で「comico」のコミックはカラーなのでけっこう高いんですね。にもかかわらず、相当売れている。さらに「ReLIFE」で初めて漫画本を買ったという人がいっぱいいるらしいんです。要するに、漫画ファンではなくて時間つぶしのために「comico」のアプリを入れて、「漫画って面白いかも」と思った層が実は支えているコンテンツ。そしてそのままアニメになって。いわゆるオタクコンテンツとは違う成り立ちかもしれないですね。
「ReLIFE」はうちの家族もみんな楽しんで見てまして。物語としてとにかく面白い。キャラとか絵柄的には、アニメファンからするとレベルは平均的だけど、声優さんの演技もキャラ設定も面白いよねって。私としては7月期、一番いいんじゃないかなと思いました。
僕は基本的にプラモデルが好きなので、そういう視点から作品を見ていたんですけど、「機動戦士ガンダムUC RE:0096」はやっぱり定番で。ちょうど「機動戦士ガンダム 鉄血のオルフェンズ」が今秋始まりますけど、1期と2期の間をつなぐマーチャンダイジングで放送した、っていう狙いなのかな。ただ、それぞれの商品の出来はすごくいいんで、どこのお店でも常に再放送することで(売り上げが)動いていた印象がありますね。「マクロスΔ」は、新しい試みがいろいろあったんですけど、最近のアニメってメカの動きは基本的に3Dで作るんですが、アニメの作画用の3Dデータをプラモデルの設計に流用したのが、「マクロス」が初めて。それが確か「フロンティア」のときの「VF-25」かな? もちろんそのままでは使えないので、変形ギミックの追加などでいろいろデータ加工し直すんですけども、そういうところまで初めて使われた作品が「マクロス」。バルキリーの変形には、同じ形(仕組み)が一切ないんです。今回、単発機(エンジンを一機備えた飛行機)のドラケンⅢっていうのが出てくるんですけど、これまでバルキリーのデザインって「F-14トムキャット」が原型なので、エンジンが二つあって、それが足になるっていうのがほとんど基本だったんですけど、それをエンジンが一発しかない飛行機の変形をどう設計するのかっていうのにデザイン的にチャレンジして、スウェーデンの「サーブJ35ドラケン」をモデルにすることでそれが成功したっていうところに「すごいな」と思いながら見ていました。
3Dデータをマーチャンダイジングに活かすって今後増えそうな感じですか?
増えると思います。その点でいうと「クロムクロ」とかは、たぶんそれを意識してやってたんだろうなとは思うんですけど、今のところ動きがないですね。プラモデルは、だいたい企画・設計・デザインに1カ月、金型の製作に3カ月、なんだかんだで6カ月くらいで市場に出てくるんですね。そのスパンを考えると、もう出ていてもおかしくないころだけど、ちょっと動きがないかなあと。フィギュアの方の展開かなあ?フィギュアは企画書を書いた時点から発売まで1年くらい時間がかかるんですよ。
他にマーチャンダイジングでは、ラバーストラップと缶バッチ、クリアファイルくらいしかないじゃんっていうアニメがたくさんあると思うんですけど。あれも商品化するのにだいたい3カ月かかっちゃうので、1クールの間に商品を出そうとすると、すぐプリントできる、ああいうものになっちゃうっていう。
そうですね。だから放送中に商品を出すためには、最初に委員会側にくいこんでないと、実は出せないっていうところがあって。その辺、バンダイとかはガンダムで垂直統合でやってますんで、さすがだなと思いますね。
よく言われるのが、男性は一つのアニメを気に入ったら長く消費し続けるので後々のグッズ展開がしやすいんですけど、女性はわりと目移りが早いので、「おそ松さん」みたいに2期あるものならともかく1クールで終わるものは、グッズが出るころには次の興味に移られているという(笑)。女性向けアニメは、結局ラバーストラップやクリアファイル、缶バッジのようなすぐ作れるものばっかりになっちゃうっていうような話はよく聞きます。
そうですね。7月期のアニメの話に戻すと、自分が担当していた「魔装学園H×H 」とか、始まる前からいろいろ話題に上げて頂いたんですけども(笑)、楽しく終わってくれて非常にありがたいかなあというところでございます。それから、もう一つ担当していたのが「腐男子高校生活」というショートアニメなんですけれども。非常に女性に評判がよくて。でも女性ってあんまり円盤買ってくれないんですよね。意外と評判が上がっているけど、原作は売れているけど、円盤は…もう少し頑張ってほしいっていう感じになっています(笑)。