• シェイク!Vol.17 「気になるコンテンツの見つけ方」(3)<br>藤村忠寿(水曜どうでしょう)×林雄司(デイリーポータルZウェブマスター)×小国士朗(NHK制作局)

シェイク!Vol.17 「気になるコンテンツの見つけ方」(3)
藤村忠寿(水曜どうでしょう)×林雄司(デイリーポータルZウェブマスター)×小国士朗(NHK制作局)

連載3回目は、NHK1.5チャンネルの話からなぜデイリーポータルZは続くのか? iTSCOMに移ってからはどんなことを考えているのか、藤村さん・小国さんが鋭く迫っていきます。

デイリーポータルZはなぜ生き残っているのか

小国

テレビ番組って、長いじゃないですか。全部見るのはなかなかに大変です。

藤村

テレビの人が言っちゃってるよ!

小国

テレビって基本的に引っ張る文化ですけど、若い人はそれに耐えられなくて見てくれないっていうのがあって。なので、「NHK1.5チャンネル – テレビのオイシイところだけ集めた動画サイト」というサービスをFacebookを中心にやっていて、これは結論をまずどーんと見せてるんです。たとえば「ためしてガッテン」。テレビ放送では、くたくたになったタオルをふわふわにする方法を45分かけて紹介していくんですけど、かいつまんでいういと、20回くらいばっさばさやるとタオルってふわふわに変わるんですよ。

藤村

いま、10秒で終わった(笑)。

小国

10秒で終わるんです。このタオルの動画でいうと、結論を抽出したショート動画をガッテンアニメと呼んで、ポプテピピックなどで有名なAC部さんに作ってもらいました。結論は10秒で終わっちゃうんですが、それだとさすがに短い。だから、全部で1分くらいの動画の最後の20秒くらいは「ガッテンガッテンガッテンテン」とずっと歌ってたりする(笑)。そんな動画なんですが、けっこう見てもらえる。『ONE PIECE』の作者・尾田栄一郎さんが週刊ジャンプのコメントで「ガッテンアニメがヤバすぎて動揺を隠せない。ガッテンガッテンガッテンテン。」と書いてくれたんですよ。やってて本当によかったーって思いました。でも、Facebookページをやっていて実感しているんですけど、いま、ネットって、どんどんセグメントされていく方向じゃないですか。ハウツーものがいいとか、ガジェットものが受けるぞ、とか、セグメントされたほうが人に刺さりやすいし、ファンが作りやすい。その流れのなかで、デイリーポータルはひさびさに見ても何のサイトなのかわかんなくて。

藤村

そうなんだよ。

小国

これがこの時代に生き残っている。すごいなと。

そうなんですよね。どんどんテーマごとに細分化されていっているなかで、デイリーポータルはノンジャンルの、なんかバカが見るサイトっていう。

藤村

あそこを見るのは完全なおバカさんじゃない。面白がろうとする気概のある人ですよ。しかも、えんえんふざけている道中を見せつけられるから、読む側の理解力も必要です。2年前に「水曜どうでしょう藤村DがデイリーポータルZに説教をする会」というイベントをやってね。

あのイベントで「おれたちにはツッコミがなかったんだー」って気づきました。ライター全員が自由にボケてるだけだった!ツッコミながら見ないといけないから、見る人の負荷が高いんだって知りました。

藤村

ツッコミが入れば爆笑の渦に行くのに、なんか寸止めで終わらされるんだよね。

あれ以来テレビを見ては、ツッコミ役って必要なんだなって、痛感しています。タモリ倶楽部にほんこんさんがいるのはそういう意味だったのかーって。

藤村

ツッコミ役はどこにでもいるよ!

そういうのがない楽しいグループだったんですよ。

藤村

そんなことやってっから、他の会社に売られるんだよ(笑)。いつ会社変わったんですか?

11月ですね。

藤村

半年ぐらいか。まだ手探り?

いや、だんだん分かってきました。

藤村

何がわかったの?

あのー、ダメの「いいね」と、ほんとにいいの「いいね」の違いが(場内笑)

小国

林さんって昔からそうなんですか?

昔からってどういう?

小国

どういうことで林さんってこうなっちゃったんですか? 最初の林さんのイメージって、ネットで有名なターバン巻いてる人、でした。なんでターバンなのかも、なにをしたい人なのかもわかんなかった。

デイリーポータルってとくにねえ、アクセスがいいと広告料が入るわけでもないし。たまーにPRもあるんですけど、少ないし。で、いま、数字を求められることもなくなっちゃって……。東急グループにウェブメディアがなかったので。

小国

ちょっと待って。いま、東急グループのウェブメディアの代表格になってるんですか?

いや、なってないです。すみっこによくわかんないのがあるなーってかんじです。ニフティだったらページビューの目標があるんですけど、iTSCOMになってから目標値もなくなっちゃって。

藤村

え、じゃあ、あなたたちの存在意義はどこにあるの?

小国

自分ではどう規定してるんですか?

あのー、上げようって。

小国

なにを?

前の月より、上げようっていう(場内笑)

藤村

ゆるやかでもいちおう成長しているわけですからね。

小国

前向きですね。

隣の島ではiTSCOMの番組を作ってて、地元のお祭りとかを取材しているんです。「いまほら、フェイクドキュメンタリーが流行ってるから、どんと焼き毎日やってますって嘘のニュース流しましょうよ」って、「暖炉で薪が燃えているのを長時間えんえん流す番組が話題だし、どんと焼き3時間はどうですか」って提案したら、「もういいです」って(場内笑)。「そういうことじゃないですから」って。

藤村

おれだったらぜひやってほしい。

え? そう思います?

藤村

だってそれで痛い目見ないと、あなたたち分かんないから(笑)。「どんと焼き毎日やってごらん」って言って、ギプアップするまでやらせますよ。あなたの顔が暗ーくなってくるのを見たい。

でも、デイリーポータルに関しては、作るのそんなにつらくないんですよ。

藤村

デイリーポータルは、林さんだけじゃなくて、他の人もやってるもんね。しかも、みんなで一緒に作るんじゃなくて、有象無象がバラバラにやってるでしょ。ものづくりの環境として、そこがいいよね。

ばらばらのほうがいいですか? チームワークにけっこう憧れるんで。

藤村

自分が撮影するときに、手伝ってもらったりはしてるんでしょ? そのぐらいのチームワークでじゅうぶんだって。テレビってチームで作るから、そのなかでちょっとごたついたりするじゃない。これがめんどくさい原因なんだよね。

Facebookページはどうですか。やってて楽しいですか?

小国

1日1本動画を配信してると、ヒットする動画の傾向ってだんだんわかってきちゃうので、それがつらいですね。共感されるもの、感動できるものは強くって、作り手はどうしてもそっちに寄せられてしまう。

再生回数とか、数字が出ちゃうから、みんなそっちに行っちゃうんですよね。

小国

そう。数字が出るのが嫌で。だから林さんが回し続けているのはすごいな、と。

いま、インターネットがどんどん真面目になっていて、ライターもどんどん真面目な方向に行こうとするんです。

藤村

それは止める?

止める! そんなのは求めてない。真面目なことなんて、ワンパターンだから、そんなん誰でもできるよ、とにかくふざけようって言います。

[ 次回 セオリーを破壊する番組作り へ続く ]

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