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シェイク!Vol.16 「境界線を越える仕事」(4)
後藤繁雄(クリエイティブディレクター)×草彅洋平(東京ピストル代表取締役社長)×ターニャ (谷生俊美)(日本テレビ)
連載4回目は、草彅洋平さんが手がけられた「歌舞伎町ブックセンター」の話題から、なぜかどんどんとホストの話題へ・・・。非常に深いホスト道の世界をご覧ください。
ホストクラブの秘密を語る
どうして歌舞伎町ブックセンターを作ろうと思ったの?
きっかけは、ホストクラブのオーナーである手塚マキさんに相談されたことです。ホストは悪いイメージが定着して求人しても人が集まらないそうなんです。手塚さんは、部下のホストを教育して社会性を身につけさせたいという思いもあった。じゃあ書店がいいと。クラウドファンディングをしてみたらバズりました。ホストになりたい子は増えなかったのでそこは失敗したんですけど。ホスト書店員という類例のない存在になって、実績を持てたらテレビに出やすいんじゃないかなって思ったんですけどね。「ホスト書店員売り上げナンバーワンです」って言えたら強いじゃないですか。
ホストっていま減ってるんですか?
酒をたくさん飲まなきゃいけないとか、最初の数ヶ月はお金にならないイメージが定着して、若い子がぜんぜん集まらない。ぼくホスト業界にめっちゃ詳しくなりました(笑)。ホストクラブは70年代ぐらいから生まれた日本独自のカルチャーです。社交ダンスを学ぶときのパートナー制度から生まれました。それが歌舞伎町でホストクラブとして定着していきます。
詳しいなあー。
勉強は得意ですから(笑)。
そこでホストの特別性はどうやって作られていくのか。
ぼくね、ホストの会話術マスターしたんですよ。ホストって「何の仕事してますか?」とか「彼氏いるんですか?」とか聞いちゃいけない仕事なんですよ。聞かれると現実を思い出して夢から覚めちゃう。
忘れるために来てるんだね。
手塚さんがホストになるとき、最初にライターを渡されて、これで1時間喋れと言われたそうです。そこで喋れない人はホストに向いてないから出ていけと。ライター見て「これ可愛いねー」とか、てきとうな話をえんえん話すのが大事なんです。そうすることで歌舞伎町だけは現実から解放されて、ホストとの思い出に紐付けられる。他の場所、たとえば五反田駅や汐留駅は生活と結びついているけれど、歌舞伎町だけは自由。無駄話によって神話を作るっていうのが面白い。
いわゆるホストにとっての幸福は何なんでしょうか? お金?
手塚さんは金じゃなくて地域貢献だって言ってました。
地域貢献! それは歌舞伎町って意味で?
ホストの万引き問題に手を焼いていたそうなんです。田舎から上京して、源氏名を名乗り始めて、一ヶ月もすると万引きで捕まっちゃう。悩んだ手塚さんは、ホストが夜の歌舞伎町を掃除する「夜鳥の界」を始めました。商店街の人とも仲良くなってホストに地元意識が芽生える。そうすると万引きがしにくくなる。
ホストはこう生きるんだっていうホスト道があればいいのにね。
元報道記者からすると、ホストクラブって、女性にじゃんじゃんお金を使わせて、払えなくなったら夜のお店を紹介して……っていう黒いイメージがあります。
不幸の連鎖の商売ですよね。
ちなみにぼく、ホストの人じゃないっすよ! 業界に詳しいだけですから。
ちょうど事件記者をやっていたころ、当時の石原慎太郎都知事によって「歌舞伎町浄化作戦」というキャンペーンが行われたんです。規制を強化して、ポン引きも撤廃。結果、歌舞伎町は綺麗になったけど活気がなくなったという声もありました。社会的な動きとホスト業界の興盛は符号しているんでしょうか。
そうですね。ホストクラブっていまだに反社扱いですからね。
歌舞伎は反社のエネルギーを吸い上げて美しい花にする。そういうものが道じゃないかな? ホストにも道があるといいんだけど。
ホストクラブは日本独自のカルチャーで面白い。きちんとした会社が運営して、いい道が見つかるといいんですけどねー。ちなみに女性は二つの条件でめっちゃお金を使うって手塚さんが言ってました。ひとつは母性。ダメな子でも可愛いなと思ったらお金を使っちゃう。ふたつめが嫉妬なんですよ。客同士が嫉妬して競うんですね。母性と嫉妬の二つのベクトルで現金回収している構図です。で、同じ構図でキャバクラをやっても成功しないんです。ホストクラブとキャバクラはぜんぜん別物。
随分知りすぎていない?
そうですね(笑)。
そのお話は、ダメ男対策に使えそうですね。悪い男は女のどこを突いてくるか。