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シェイク!Vol.14 「今」(2)
竹中 功(株式会社モダン・ボーイズCOO)×野村 和生(フジテレビ)×谷口 マサト(LINE)
異なる業種で活躍する3人がそれぞれの視点で語り合い、新たな価値観を生み出すヒントを見つけるトークセッション「シェイク!」。連載2回目は、テレビとネットの距離感・作法の違いからはじまり、テレビにおける全国ネットとローカルの違いの話まで、「違い」についての話題。
テレビとネットでは距離感覚が違う
テレビ関係の方とお仕事をしていて、やはりテレビとネットでは時間感覚・距離感覚が違うな、と感じることが多くて。テレビとラジオも距離感が違うとよく言われますよね。テレビは「みんなへ」でラジオは「あなたへ」。ネットはさらに近くて、感覚としては居酒屋で横に座っているぐらいの距離。
『スクールジャック!!』という生番組をLINE LIVEさんといっしょにやったんですね。スピードワゴンの二人が実際に高校に訪問して、その学校の魅力を生で伝えるという内容です。LINE LIVEさんから番組が始まって5分以内にお客さんのコメントを読み上げてくれと言われました。そうしないとせかっく来てくれた視聴者が離れていっちゃう。そのぐらいやらないといけないんだと驚きました。
以前、堀江貴文さんがメルマガ内の読者からのQ&Aコーナーで、文字化けしていた質問に文字化けしてますって回答していたんです。わざわざそんな質問載せなくてもいいじゃないですか。なにやってんだろうと思って担当者に聞いてみたら、ファンサービスだって言ってましたね(笑)。
そらファンは嬉しいですよね。相手してもろうてるってことですもんね。
文字化けにすら答えるよっていう態度を見せているんだと。
でも、お客さんが居酒屋で真横の距離にいるとはいえ、実際には画面の向こうに何万人、何百万人とおるわけでしょう。その人たちの顔をどう見ながら送り出してはるんですかね。
ニコニコ動画やLINE LIVEのコメントは、反応のひとつとしてそのあとの企画に影響しますね。特に生でやっているときは。
そのときは、年齢や性別が切り口なんですか? それとも違う切り口がある? 岡山県出身の人向けとか、魚屋のおっさん向けとか。もう、朝昼晩の時間感覚は崩れてしもうたからね。悪いけど、月9ドラマを月曜9時に座って見てるやつおらへんわけでしょ。いろんな見方がされているときに、どうマーケットのカテゴリーをつけて、どう攻めていってるの?
ウェブに関して言えば、ちょっと深く、狭くしようという意識はありますね。ウェブライターの世界でよく言われるのは、「カニのさばき方」という記事をアップしても誰も読まないけど、「越前ガニのさばき方」にすると読まれる。テレビ的な広さより狭くして、少しズラすんですよね。この間さまざまなウェブメディアが物販をする「WEBメディアびっくりセール」というイベントがありまして。けっこう下らない、ネタに走ったものも売ってるんですよ。水素水のソーダ割りとか、線路の下にある石とか(笑)。でも大盛況。みんな喜んで買ってるんですよね。
それは新鮮やったんですかね?
ウェブメディアが物品を売るってこれまでなかったですからね。聞いた話ですが、漫画家のファン向けにグッズを作るとき、作者とファンの距離感が近いほど、どうでもいいものが売れる。くだらなさと距離感は比例するって。だから、「WEBメディアびっくりセール」も、それだけ距離が近いからいいのかなあと。それもコミュニケーションなんですよね。
今、ウェブの世界って、ジャパネットたかたみたいに動画で商品を紹介する女の子がたくさんいるんですよね。
これからはライブコマースですね。完全に。
それをテレビでやろうとしてもなかなか難しいですよね。
テレビで取り込める気がしないです。たぶんテレビ的な演出をすると離れちゃう。
気になってるのは、フジテレビって全国ネットの顔と、東京ローカル局の顔があるじゃないですか。ぼくは大阪という田舎にいるから気になるんです。東京の人は地方のことをどう見てるんですか?
ローカル向きに作っている認識はないでしょうね。常に全国向けに作っています。
ということは、沖縄のオバァの欲しいもんのことも全部理解できてるんですかね。
できてないです。
そこですよ。東京が電波飛ばすから全国になってるっていうのはたまたまの都合であってね、ほんまの全国ネットいうんは、徳島も岡山も沖縄もぜんぶと繋がってコミュニケーション取ることやと思う。自慢ちゃうけど、吉本には「あなたの街に住みますプロジェクト」ってありましてね、47都道府県に芸人と社員が住みますゆうて。
あれはよかったですね。
ほんで「沖縄にこんなおもろい芸人おったわー」言うて発掘したり、北海道の奴は隣は青森県と思わんと東京都思っとるなーって知ったり、発見があって幅が広がったんですよ。まだまだお笑い売りに行ってへんとこあるでっていうのが見えた。
北海道出身で『水曜どうでしょう』が大好きでした。ああいうふうに、地方から面白い番組が出てきて、大泉洋さんみたいなタレントが地元の支持を集めながら東京にのぼってきたらいいのになあと思います。
ご当地の映像という意味では、日本人以外を対象にするのもありかもしれないですね。ネットの世界で今熱いのは外国人向けです。みんなトリップアドバイザーなどのクチコミサイトで情報を集めて日本に来るので、それに対応した日本のご当地を紹介するサイトが流行りだしてます。そのまま旅行につながるからお金にもなりますし。
へー。外国人を意識した作り方をしてるんですか?
完全に意識してますね。これからも外国人旅行客がどんどん増えてくるので。日本の旅館でもスポットでも、英語サイトが貧弱なんですよ。そういうのぜんぶ代行しますってところが増えています。熱い分野ですね。