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シェイク!Vol.13 どうしたら作れる、面白い企画 3rd(5)
伊藤隆行(テレビ東京プロデューサー)×米光一成(ライター)×佐藤ねじ(アートディレクター)
今回の連載最終回は、参加者からの質問に答える形で進行。
今回はどんな質問に三人は答えているのか? とくに企画書を見るときにどこを見るのか。という話に注目です。
企画書を強くするもの
質疑応答に入りましょう。質問はありますか?
池からほんとにやばいものは出たことないんですか?
出てないです。
やばいから放送ではカット、みたいなことはまだ一回もない?
地元の人から頼まれて放送を控えたことはあります。絶滅危惧種のゲンゴロウが出てきたんです。ここにいると分かったら人が取りにきてしまう。
そこはかなり気を遣っているんですね。
まだ御遺体が出てきたことはないです。出てきた場合は、まあ当然ですけど通報します。通報していちおうカメラは回しますけど、ニュースになると思うので、本編を放送するかどうかはそのとき協議しましょうと、報道局長と話はついています。
根回しはしてあると。
絶対どっかで出てくると思うので、スタッフには、これ河童じゃないかって一回思ってくれと言ってあります(笑)。
その事態に遭遇したときに、タレントさんはいろんな能力が求められますよね。誰が当たるかわからないけど。
そこはもうしょうがないですよね。いるでしょうから。
確信している(笑)。
首塚や胴塚と関連しているような怖い名前の池ってあるじゃないですか。平気で応募してくるんですよ(場内笑)。平家の落ち武者が池のほとりで命を絶ったという伝説があって石碑も立ってるのに!
うわーそれ見たい(笑)。
そっちの方向に行くという手もありますけどね。あるいは世界に行くとか。アンコールワットの聖なる池の水を抜いたり(笑)。
外来種の問題とかも、気を遣ってやってます?
生き物のことをそもそも知らないから、もう専門家呼んじゃえっていう。専門家やNPOの方を呼んで、イベントロケにしています。タレントが「これはなんですか?」と聞いたらすぐ答えてくれる。地元の方も一緒にやっているので、どうしたいかをその場で聞けます。「鯉は駆除しますか? 戻しますか?」と聞く。その場その場でなるべく解決するようにロケを回しています。
なにが起こるかわかんないもんね。
想像外のものが出てきたときは、専門家もなにこれと驚くという。前回、日比谷公園をやって、鍋島藩の家紋がついた丸瓦が出てきたんですよね。古地図を見ると、日比谷公園のあたりはかつて江戸時代の武家屋敷だった。で、その後、旧日本軍の練兵場になっているんです。番組の予算では産業廃棄物処理費が高すぎてヘドロを取りきれてないんですけど、もし取ったら、旧日本軍の武器が出てくるだろうと公園の方は言ってました。あと、日比谷公園の奥に、昔のお濠の名残で水たまりになった池があるんですね。お宝が眠っているとすればその池だと。今回雲形池の水抜きをやってよかったという評価が東京都から得られるのであれば、小池都知事があっちもやっていいよと言う可能性もある。
ほんとにどんどん政治的なものが絡んできますよね。地域の問題なので。
そうですね。ほんとに東京都がね、OKを出してくれないんです。やっぱり前例がない。不忍池をやってほしいと、旧台東区議会議長や台東区議会議員の方から応募があったのですが……。
それは見たい。
その議員の方が都に掛け合っているのですが、かれこれ2ヶ月経っちゃいましたね。やはりなかなか許諾が得られないのが現状でして。
これ、ライターの人がこのプロジェクトにつくべきですね。裏側がめちゃめちゃ面白い。
漫画家のカメントツくんが取材に行ってましたね。
こないだ現場に来ました。
取材して漫画に? 面白そう。読みたい(注:カメントツさんのツイッター情報によると12月25日発売の『レタスクラブ』に掲載予定です)。
最近、企画書を読めないプロデューサーが多いと言われています。3人は、企画書を読んで選ぶこともあると思います。選ぶときのポイントを教えてください。
ぼくはもっぱら出すほうで、読むことはないです。お二人はどうですか?
表紙一枚にタイトルがあって、提出者の名前が書いてありますよね。そこでパンチ力を見ます。タイトルを見たときにどういうふうに自分の気持ちが動くか。
中を見る前にタイトルだけで?
はい。テレビ番組のタイトルって看板ですから。ぱっと見て想像力を掻き立てるタイトルだと強い。中身がぜんぜん想像と違っても、タイトルに一目ぼれすることはけっこうあります。中身がタイトルを超えなくても「こっちのほうがよくない?」って話せるので。本当にダメなものは会話も発生しない。
生にゲームの作り方を教えているので、企画書を出してもらっています。そのときはね、本当にそれをやりたくて書いてるのかどうかを見ますね。こうすればウケるでしょって思って書いてないか? と。まあ、どんな企画書が来ても作らせてみるんだけど、マーケティング狙いの子はつまづいたときに弱い。なんかよくわからん企画だが熱意が伝わってくるものはやっぱり強いです。ぼくは『もじぴったん』の開発者のエピソードが好きで。
後藤裕之さんですね。今は面白法人カヤックの企画部にいます。
『もじぴったん』は言葉を作っていくパズルゲームです。プレイヤーの作ったものがちゃんと言葉になっているかを判定するためには、コンピューターのなかに辞書が必要なわけです。最初のプレゼンのときにプロデューサーが「面白そうだけど辞書作るの大変だよ」って指摘したら、「もう作ってます」って答えたという。その時点で2万語の辞書を趣味で作っていた。「こいつ本物だ」ってことで、企画は通った。
後藤さんってそういう人なんですよね。
ほんとにただただやりたいんだっていう熱量があると強い。しかもそういうときって、やっぱり変な、想像を超えたものができますもんね。『もじぴったん』も変なゲームなんですよ。
『香川照之の昆虫すごいぜ!』を企画したNHKの方も昆虫にものすごく詳しいんですよね。その意欲が香川さんを口説くところまで行ったんでしょうね。着想した人がやりたくなかったとしても、スタッフの中に誰かやりたい奴がいるチームはうまくいく。やる気は大事ですね。
そういう意味では、その企画書を誰が出したかも加味したジャッジかもしれないですね。池の水を伊藤さんが抜きたがっていることに意味がある。これはウケそうだからっていう外の力だけで出すのと、バックグラウンドがあって出すのは違うと思うんです。
うんうん。自分から湧き出る情熱が大事、ということで、シェイク第13回これで終わります。ありがとうございました。
(拍手)
[ 完 ]