• シェイク!Vol.11 マンガやアニメをつくる側の視点(5)<br>諏訪道彦(読売テレビ)×草彅洋平(東京ピストル代表取締役社長)×小沢高広(うめ) (漫画家)

シェイク!Vol.11 マンガやアニメをつくる側の視点(5)
諏訪道彦(読売テレビ)×草彅洋平(東京ピストル代表取締役社長)×小沢高広(うめ) (漫画家)

異なる業種で活躍する3人がそれぞれの視点で語り合い、新たな価値観を生み出すヒントを見つけるトークセッション「シェイク!」。
最終回は、マンガやアニメの現状の話から今後の話までを語り尽くしました。

今後のマネタイズのゆくえ

諏訪

ぼくにとっては、視聴率を取るための試行錯誤こそがクリエイティブなんですよね。

小沢

やっぱり未だに視聴率なんですか?

諏訪

それはね、論争もあると思うんですけど、視聴率です!(笑)。番組関係なくテレビをつけている割合をセット・イン・ユースといって、いまゴールデンタイムで60%を超えるかどうかなんです。昔と比べて減ってはいますが、まだ過半数はあるという見方もできる。それに最近視聴率もね、ターゲット別の細かい数字が出てくるので、マーケティングの指針になることはなるんです。

小沢

うちはアニメーションに関しては、NetflixやHuluやAmazonといった、サブスクリプション方式のもので見ています。うちの子たちがコナン好きなんですけど、テレビでは見たことないんですよね。

諏訪

土曜日の夕方18時に4チャンネルをつければ必ず見られるんでー(笑)。でも、今はそんなものなんですよね。

小沢

(サブスクリプション方式のものは)1話からずーっと続けて見ていくんですよね。

諏訪

一気に見れるのはいいですよね。でも、ぼくらはいままで、土曜日の18時にいかに見てもらうかに集中してきたんですね。ところが、自分たちで自分の足を食べちゃうタコみたいに、見逃し配信「My Do!」というものもやっていて。放送終了後次週の放送がある30分前まで自由に見ることができる。「そこまで言って委員会」は東京だけはどうしても放送されないのですが、「My Do!」では見れます。これねー、番組放送中に見逃し配信「My Do!」配信中って出るんですね。見逃しっていう言い方はなんとかならないかなって思います。せっかくいまオンタイムで見てくれている人に見逃し配信を案内するのはおかしいだろうと。

高山

いま、テレビの見られ方には、リアルタイムとオンデマンドと録画の3つがあると思うのですが、諏訪さんはやはりリアルタイムで見てほしいですか?

諏訪

難しいところですけどね、日曜の夜にサザエさんを見て、楽しい日曜が終わるなって全国民が感じるわけじゃないですか。テレビの力だと思うんですよね。善し悪しは別として。

高山

みんないっしょに感じてほしいですか?

諏訪

自分がこどものときにお茶の間でアニメを見てすごしたことが、いまいろいろなエネルギーになっているのは事実です。ひとつのロマンとしていいんじゃないか。まあ、サザエさんでさえその地位が危うくなっているんですけど。

高山

セカンドスクリーンと言って、テレビを見ながらスマホやタブレットでツイッターやゲームをしている人がいま6割だそうです。それはどうですか?

諏訪

そこはね、自由だと思います。テレビ見ながらごはんを食べてもいいわけだし。

高山

それはいいんですね。

小沢

うちはリアルタイムでテレビはほぼ見ないんですが、見るときはツイッターで実況したいときですね。みんなで実況して楽しくすごしたい、というのはお茶の間の拡大ですよね。

諏訪

共有できて楽しいという。

小沢

高山さんは作品をネットで発信していますよね。「やわらか戦車」はライブドアネットアニメで連載していて、いまはyoutubeやニコ動などでも見ることができます。

高山

2005年に会社作ったころの感覚だと、テレビでアニメがメインステージだとすると、ぼくらはよそでやろう、もっと言うと小屋を作ろうという意識でネットでやってたんですけど、それを見たテレビの人が声をかけてくださって、いまはテレビの仕事もしています。「ネットに強くて、短編アニメの得意なアニメ会社」ということで声をかけてもらっているのだと思います。ネットで話題になると視聴率も上がったりします。

諏訪

なるほどね。テレビのシェアが減ってきているのは事実ですからね。『天空の城ラピュタ』で「バルス」という呪文がとなえられるタイミングにツイッターで「バルス」とつぶやくお祭り騒ぎがあって、それで数字が取れたりする。やっぱり楽しみ方が多様化しているのだなあとは思いますね。

高山

でもほんと、0.1%とかそういうレベルで翌週よくなったりするんですよ。それでちょっと嬉しかったりします。

諏訪

テレビは、深夜枠でもですよ、アニメ1本の制作費は1500万円くらいします。制作委員会を作ってそのお金を払い、日本ではいま1クールに50本の新作がある。そういうのとは違う作られ方っていうのはすばらしいですよね。

高山

ありがとうございます。

諏訪

ずっと続いてますもんね。

高山

最近多くなってきたのがスマホゲームのアニメ化です。

小沢

スマホゲームのアニメ化といえば『けものフレンズ』はすごかったですね。

諏訪

あれは面白いですね。ああいうのが出てくるんだなあと思いますね。最近はショートアニメもそうですし、「モンストアニメ」はyoutubeオンリーで1話7分とかね、ああいうのもありだなあと思って。アニメーションの世界が広がることに関してはなんの問題もない。あまりにも飽和状態になるのはどうかなとは思っているんですけどね。

客席の男性

コンテンツを作るだけでなくマネタイズも大切だと思うのですが、これからどんなビジネスモデルができると思いますか?

高山

業界で言われている通り一辺倒なことを言うと、パッケージが売れなくなってきてるなかで、配信メディアに移ってるんですけど、日本の配信はまだマネタイズするにはまとまりきれてないと思いますね。グッズ市場と海外への配信をどう組み合わせるか、ですかね。

諏訪

うちにも海外への配信担当のコンテンツ事業部があります。良い意味でのライバルが東映アニメさんやTMSさんだったりします。でも、いずれにしても、いいものを作らないと売れないよね、と制作側としては理解しています。マネタイズはしなきゃいけないけど、その前に、自分たちがおもしろいものを作ることで結果戻ってくるんですよ。自国でうまくいかないと海外からも評価されない。

高山

コナンみたいに映画の興行収入でも勝負できる作品は羨ましいです。

諏訪

そうですね。コナンは別の柱もあるから継続していけるっていうのはありますね。

高山

コミックのマネタイズはどうですか?

小沢

漫画って、ウェブの文化に乗っかって、やっとタダで見られるものになってきた。それがここ2、3年の話です。漫画業界全体の売り上げは、2010年がいちばん底で、電子書籍の売り上げを合わせるといま上がっていっています。紙の雑誌の売り上げは右肩下がりですが、悲観はしてないです。Kindle Unlimitedのようなサブスクリプション系のサービスをどこかの出版社が打ち出して、ある程度安定するんじゃないかな。たとえば月額1000円で小学館の漫画読み放題みたいな。

高山

紙から電子への移行は着実に進んでいる?

小沢

してますね。収入ベースでいうと、2010年のころは1%行くか行かないかだったけれど、最近は収入の半分が電子からのお金だっていう漫画家さんの話も聞いたりします。原稿料をのぞけばそれぐらい入っている人はけっこいる。しかも年々上がっていっているので。ぼくは、「ニブンノイクジ」に関しては、ウェブの連載ってぶっちゃけお金にならないってよく言われるんですけれども、たいへん稼がせていただいております。原稿料の他に、PVに応じてお金が入ったりするので、通常の原稿に比べたら1ページあたりの利益が倍ちょっとぐらい入るイメージですかね。

諏訪

このまえね、週刊少年ジャンプの部数が200万部を割ったっていうネットニュースを見たんだけど、いっさい電子の本に触れてないんですよね。漫画は売れなくなったというイメージ操作をしたい悪意的な記事に思えたな。

小沢

いま、ジャンプはすごいですよ。アプリ「少年ジャンプ+」のクオリティも高い。

高山

ぼくはKindleなどでスマホで本を読めるようになってから、漫画をたくさん読むようになりました。

小沢

電書は便利ですよね。だって、いままで旅行に漫画を持っていけなかったんですよ。それがいまでは温泉宿で『三国志』全巻を読破できる。じゃあ、こんなところですかね。終了です。きょうはどうもありがとうございましたー。

< 完 >

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