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シェイク!Vol.10 ヤヴァイ企画の話(3)
平岡大典(NHK)×草彅洋平(東京ピストル代表取締役社長)×吉田尚記(株式会社ニッポン放送)
異なる業種で活躍する3人がそれぞれの視点で語り合い、新たな価値観を生み出すヒントを見つけるトークセッション「シェイク!」。
第三回では、NHKのヤヴァイ企画の話の流れから、いわゆる「炎上」リスクについて三人がどのように考えているのか。という話題を中心に話が展開していった。
炎上をどう乗り越えていくか
バズった最大の理由は、やはりこのバーコード頭ですよね。これはどうやって思いついたんですか?
最初の案では3人のイケメンキャラクターが設定されていました。ちょっと既視感があったんですね。ツイッターでバズらせることを目標としたときに、この3人では弱いのではないか。イケメン市場は昔からありますから。それで、バーコード頭なんだけどカッコいい営業職員はどうか、と提案したら、幸いなことに評判になりました。
そりゃあ評判になるでしょう。
ギャップがあると人は食いつくんです。ステレオタイプな表現だと流されてしまうけれど、人気声優とバーコード頭という離れたものを組み合わせるとフックになる。よく例に挙げて話すのがトリンプの世相ブラです。世相を反映させたユニークなブラジャーの発表を恒例でやって評判になっている。プレミアムフライデーブラとか、女性維新ブラとか。ブラジャーとプレミアムフライデー、ふつうのキーワードもふたつを合わせると意外性が生まれます。
ほんとにギリギリ攻めないと今話題にならないと思うんですよ。だけどちょっと攻めの姿勢を間違うと炎上してしまう。企業さんと話していると「話題にはなりたいけど、これもNG、あれもNG」みたいなことはよくあります。企画を通すのが難しいなか、かつ昨年炎上した上で、これはよく通りましたね。
上層部に説明に上がりました。ほんとに何十人に説明したことか(笑)。
これを説明しに行くの勇気いりますよね(笑)。
大先輩たちははこういう若者の世界のことがよくわからないことが多い。わからないことにノーは出せないじゃないですか。だからするすると企画が通りました。裏を返すと、うちの会社では、ヤヴァイ企画はじつは通しやすいのかもしれない。しかもヤヴァイことをすれば、ギャップを持って受け取ってもらえます。そこに突破口があるんじゃないか。
準備にどのくらいかけたんですか?
リサーチも入れると半年以上かかっています。
リリースするときはやはり不安でした?
公開してみたら、ツイッターでの反応は9割以上は好意的でした。腹筋痛いとか、草不可避とか、言ってもらえたんですけど、ヤフーニュースのコメント欄はネガティブコメントだらけで。こんなことに受信料を使いやがって、とか。
ツイッターとヤフコメで反応が180度違うのは面白いですね。
ヤフコメがクソだからじゃないですか。
その通りです。ヤフコメがクソなのは当然として、でも事実として取り上げるときに、どちらにも焦点が当てられるんですよ。一般の人もそうだし、会社の上司や責任者もそう。どっちに焦点を当てて受け止めればいいのか? 企画のKPIをどこに置くのかが、ヤヴァイ企画を実現する上での肝なんじゃないかと思えてきました。「キュン活ほっとらいん」のKPIはどこにあったんですか?
おっしゃるとおり、KPIをどこに置くかは非常に重要です。この間、NHKの女性アナウンサーが結婚したという発表がヤフートップに上がって、そのコメントを見ても、大多数が批判だったんです。結局、池によって生態が違う。ディスリ魚しか泳いでない池もある。今回は「狭い池でしか勝負しませんから」と打ち出してやりました。これまでは大海に網を投げて魚を取ってきたけれど、もうそれでは通用しないので。「鯉用の餌を用意して、鯉が泳いでいる池にだけ釣り糸を垂らします」と。
ほんとだ、ヤフコメでディスられてますね。
今回は、ヤフコメはディスられるものだ、ということを最初から説明してまわりました。
議論を呼ぶのはいいことだと思いますけどね。バズるコンテンツは、意見が割れて盛り上がるところがありますからね。
昔に比べると風向きが変わってきてると思うんです。昔は批判コメントがひとつでもついたらダメという空気だった。今ね、10代の子たちも、ヤフコメに書いてる人たちのことをバカだなってほんとに思ってますもん。批判は批判として留保するだけのメディアリテラシーがある。ツイッターで「キュン活ほっとらいん」を絶賛している子も、ヤフコメでぼろくそに言われていることもたぶん知った上で絶賛している。
ツイッターって、最初は「バカ発見器」と呼ばれたりして、若い子が吊るし上げられまくったわけですよね。で、若い子に耐性がついてリテラシーが生まれ、今では逆におっさんたちが不倫とかで吊るし上げられている。もう品行方正じゃないと生きられない時代になりました。
でも、潮目が変わってきてるのも感じますね。ベッキー別にテレビ出ていいんじゃない? って空気が出てきてて。
そうですね。あまりにもぎちぎちに締めつけられすぎて、反動で寛容ムードが生まれてきたかも。
企画の話に戻すと、KPIマネジメントとして、ネガティブコメントはスルーでいいのだと関係者にわかってもらうことは重要ですね。