• シェイク!Vol.8 面白いアニメとは何か考える 2nd(5)<br>那須惠太朗(サンテレビ)×片岡秀夫(東芝映像ソリューション)×森永真弓(博報堂DYメディアパートナーズ)

シェイク!Vol.8 面白いアニメとは何か考える 2nd(5)
那須惠太朗(サンテレビ)×片岡秀夫(東芝映像ソリューション)×森永真弓(博報堂DYメディアパートナーズ)

シェイク!Vol.8「面白いアニメとは何か考える 2nd」のシリーズ最終回では、現在まさに放映されているアニメの中で、どれに注目しているかについて、出演者それぞれ期待するアニメの候補とそのアニメに対する期待値について語っていただいた。

森永

さて、時間もそろそろということで、今期の注目アニメの話に移りましょう。それぞれ3名で挙げてみました。一人ずつばらばらに挙げたはずなのですがなぜか片岡さんと私が同じになってしまったという。片岡さん、『正解するカド』を挙げた理由をお願いします。

『正解するカド』公式サイト

片岡

深夜アニメを観ていたら、アニメの予告編だとは一見ではわからない、実写から始まるCMが流れたんです。なんと2分31秒もある長尺のCMです。私は7割くらいがハヤカワ文庫でできていると言えるくらいのハードSFファンなんですが、そういう自分からすると、地球にいきなり謎の立法体が表れて人類はどうなる!? というストーリーなんてもう待ってましたという内容なんです。ストーリーはCMやネットで調べた感じでは、この謎の立法体から出てきたイケメンの男性・ヤハクィザシュニナが出すお題を、人類の代表として外交官・真道幸路朗がどうやって解決するのか? といった内容だと思います。宣伝CMの手法も上手くて、映画の予告編なのかと思わせた実写で始めておいて、そのリアリズムが自然にアニメの画面に切り替わる。

ほかの40~50作品のウェブサイトやCMも全部観てオススメを選んだのですが、その作業の中で圧倒的なインパクトを残してくれた宣伝の勝利と、自分の好みからこの作品を今期期待の作品として挙げました。

森永

アニメ映画『虐殺器官』や映画の『スノーデン』、『ブレードランナー』の続編、『攻殻機動隊 STAND ALONE COMPLEX』の実写映画など最近はSFものの作品の公開が続いているので、新旧のSF小説を最近私は大量に読んでいるんですよ。その中で、『正解するカド』の脚本を描かれている方はSF作家・野崎まどさんの作品がすごく面白いなあと思っていて、野崎まどさんならきっと面白い、と思って『正解するカド』を選びました。野崎まどさんの小説の中では、『KNOW』が一番面白いなと思ったんですが、物語としては情報化社会が進みすぎて、人間の情報処理能力の限界が来る中で、情報庁というものができるという世界設定なんですよ。SFなのに凄く「こういうこと起きそう」というリアルさがすごいんです。しかも絵がCG系なので作画が崩れることもないだろう。きっとこれは面白いに違いない。そう思って今期の期待のアニメとして挙げました。

那須

補足しますと、東映アニメーションさんがはじめて挑戦するフルCGアニメなので、そういう意味でも注目の作品だと思います。

森永

那須さんが勧められている『FRAME ARMS GIRL【フレームアームズ・ガール】』(以下、『フレームアームズ・ガール』)について紹介をお願いします。

『FRAME ARMS GIRL【フレームアームズ・ガール】』公式サイト

那須

僕はプラモデル属性なのでその目線からお話ししたいと思います。コトブキヤという立川が本社で秋葉原に店舗をお持ちのプラモデルメーカーがあります。元々、アニメキャラのフィギュアやオリジナルデザインのロボットのプラモデルを製作・販売していました。そのオリジナルデザインロボットのプラモデルが「フレームアームズ」で、その美少女版が『フレームアームズ・ガール』です。『ブレイブウィッチーズ』や『ガールズ・パンツァー』などメカ&美少女のデザインをさせるとすごく上手な島田フミカネさんという人がデザインしました。このモデルがものすごく売れたんですね。1個5千円くらいするんですが2年間で50万個くらい売れたんです。コトブキヤさんはいろいろなアニメ関連グッズの商品化を手掛けてきたんですけども、この『フレームアームズ・ガール』では100%自分たちの出資で作ることにしたんですよ。コトブキヤにアニメのスタジオから転職してきたスタッフがいて、その人のご縁でアニメスタジオが決まり、出資は100%自社で、なおかつマーチャンダイジングも同時に展開する。この取り組み方が新しいので今期の期待の作品として選びました。

那須

遡るともしかしたら70~80年代ぐらいの『マジンガーZ』などの時代に戻ったともいえるかもしれないです。マーチャンダイザーが出資をしてアニメを制作し費用を回収・利益を出すという試みですね。これを新興のメーカーさんがやりだしたというところが新しくて、応援したいと思って、推しています。

実際の施策としては、放送する前にBD/DVD限定プラモ付き第一巻の予約販売を開始していて、それが既に完売しています。総製作費1億6千万円くらいと仮にした場合、売上だけで考えると1個5千円のプラモデルが3万2千枚くらい売れればリクープできる計算になるんですね。実際の卸値になるともっと数字は変わってくると思いますが、すでにプラモデルが50万個売れている人気タイトルなので、売上的にはアニメ制作時の時点で問題ないレベルに達していると考えられます。

もう一点、模型のデザインについてです。製品開発時にCAD・CAMでつくった設計図のデータをアニメでも使うということを『フレームアームズ・ガール』では初めて行っているんです。これまであったのはアニメの作画データを模型用のデータにするというものでした。バンダイが『マクロス』でやっているような手法です。その逆のパターンが出てきた。こういうところも新しいですね。

森永

最近だと3Dアニメーションのモデルで作られているアニメは、マーチャンダイジングに流用されることもあるのですが、サブコンテンツとしてAR・VRに流用されることもあります。3Dの素材さえあればいろいろなところに流用できるんですね。実は3Dアニメの方が手書きアニメよりもコンテンツの増産というか応用がしやすい。アニメ用だけじゃない部分でビジネスに利用できるんです。アニメ制作の手法という点で言うと、ストライプインターナショナルという会社か面白いです。社名だけ言ってもピンと来ないかもしれませんが「earth music&ecology」という女の子向けブランドなどを展開する会社です。そこがほぼかなりの全額出資をしたアニメ映画がありました。この『ムーム』は短編映画で30個くらい海外の賞を取っています。内容は日本でいうところの付喪神(つくもがみ)が出てくるストーリー。「earth music&ecology」は雑貨も扱うのでそういうストーリーのアニメに出資したということですね。既存の作品にタイアップという思考回路ではなくて、自社でコンテンツを持ってしまうという試みなんです。最近はそういう手法が増えてきていて、アニメのつくりかたが今までと変わってきているように感じます。

那須

その通りだと思います。特にコトブキヤさんがおっしゃっていたのは、重要なのはスピードだと。人気が出たタイミングで商品を展開したいと。そういう意味では二次利用の許可の手続きの時間すらもったいない。自分たちでハンドリングして自分たちで生産するのが一番商売としてやりやすいというようなことはおっしゃっていました。広い意味でアニメ自体も原作があるものは原作の二次利用なので、製作委員会で調整の場が増えるのは構造上仕方ないことだと思いますが、これだけ商売として大きくなってプレーヤーも増えてきている中で、スピードと効率をどうやって改善していくかというのは、今後の課題でしょうね。

森永

広告だとこの枠にこれくらいの人がいてこれくらいの人が観るだろうから成功率もこれくらいだろうと、見えている部分も多く、成果についても平均点を出しやすいので予算も出しやすいところはありますが、コンテンツはやや博打感ありますよね。ただそういったところに踏み出す会社さんが増えてきているのは面白いですよね。最後に、片岡さんに今期期待のアニメについてさらに挙げてもらいましょうす。

片岡

登壇前に今期公開アニメのサイトやCMはすべてチェックしているのですが、始まってみないと分からないような宣伝をしている作品も多くて、選ぶのが大変でした。今期の注目アニメは、先ほどの『正解するカド』はもちろんですが、ほかにも『Re:CREATORS(レクリエイターズ)』や『ソードオラトリア ダンジョンに出会いを求めるのは間違っているだろうか 外伝』ですね。『ソードオラトリア』は凄い綺麗なお姉さんが出てきてカッコいいので個人的にはお薦めです。『クロックワーク・プラネット』は原作も読んでいますがSF設定が面白いんです。地球が滅んだあとに時計技師が歯車で地球を再現したんだけれども既に技術が失われていて誰も地球を直すことができない、という状況の人々を描いた作品です。ファンタジックで面白いです。『GRANBLUE FANTASY The Animation』はご存知の通り有名なゲームで王道ファンタジーです。『サクラダリセット』は映画とアニメを同時に公開しています。超能力で時間を改変するんだけれども生活密着感のある作品です。『武装少女マキャヴェリズム』は女の子はやたら強くて男の子は奴隷みたいな学校に入った男性の顛末を描いた作品です。

森永

いわゆるハーレムものというかなんというか、男女比が圧倒的におかしい中で男性主人公が頑張る系ですね。

片岡

マンガで有名な作品です。『アリスと蔵六』は特殊能力を持ったずっとカゴの鳥だった女の子が世に出ていったときに爺さんと出会って、でもエージェントに追われて、というSFチックな設定の話です。『カブキブ』は学校に歌舞伎の部活を作ろうっていう歌舞伎好きの男の子が主人公の話です。原作のラノベの評判がすごく良いんですけれども歌舞伎の楽しさをお話と一緒に啓蒙してくれる作品です。ラノベ原作を読んだ人のレビューを読んてみても学園ものとしてはお薦めかなと。あとはご存知の方はご存知だと思いますが、割と鉄板な人気作品の続編が並んでおります。建前上、東芝がお勧めするのでオタ属性やエロ属性の作品は外していますが、個人的にオススメしたい追加作品のはスライドの一番下の欄です。ちなみに今期、一番エロイのは『sin 七つの大罪』かなと。エロ枠の筆頭ですね。『覆面系ノイズ』は女性向けのバンドマンガ。『アトム ザ・ビギニング』は『鉄腕アトム』の前日譚みたいな内容ですね。NHKさんが『クラシカロイド』の枠で放送します。『終末なにしてますか? 忙しいですか? 救ってもらっていいですか?』はラノベ原作もの、『ID-0』はマンガ原作でSFファンタジーっぽいものですね。

森永

今期のアニメも楽しみですね。本日はありがとうございました。

他のGプレスを見る