• シェイク!Vol.17 「気になるコンテンツの見つけ方」(1)<br>藤村忠寿(水曜どうでしょう)×林雄司(デイリーポータルZウェブマスター)×小国士朗(NHK制作局)

シェイク!Vol.17 「気になるコンテンツの見つけ方」(1)
藤村忠寿(水曜どうでしょう)×林雄司(デイリーポータルZウェブマスター)×小国士朗(NHK制作局)

告知開始後あっという間に参加申込みが完売となったこの3人のトークセッションは、その反響に違わない盛り上がりになりました。全5回の連載1回目は、自己紹介そして近況の話からスタートしました。藤村さんが映画に出るらしい話からヒートアップ。。。

番組を作らないプロデューサー

藤村

なにやるのか、よくわかってないで来てます。

NHKでぼくと小国さんは一回打ち合わせしました。ぼくがいかに、「ドキュメント72時間」が好きかアピールをしたんです。「おじいちゃんがお風呂でのぼせたやつ、最高でしたよねー」みたいな。

小国

うれしいですねー。

藤村

雑談じゃねえか!

小国

はい(笑)。テーマはよくわからないから藤村さんに投げようってことで、いちおう決まりましたね。

藤村

実は小国さんとは、10分前に初めてお会いしたばかりなんです。自己紹介から始めましょうか。ぼくから行きますよ。北海道テレビで「水曜どうでしょう」のディレクターをしております、藤村です。ディレクターなのに番組で誰よりも喋っているという(笑)。2年ほど前から舞台での役者業も始めました。犬童一心監督、6月23日公開の映画『猫は抱くもの』に出演しています。

小国

どんな役なんですか?

藤村

猫です(場内笑)。

え、ほんとに?

藤村

捨て猫8匹のうちの1匹です。

声をやってるってこと?

藤村

違うの。人間が猫を演じています。でもふつうにスーツ着てるし、ふつうに喋るの。

騙されてないですか?

藤村

ぼくも台本読んで不思議で。しかも、感極まって猫達が鳴くってト書きがあって。犬童さんもさすがにどうなのかなって迷ってたみたいなんですけど、試しに「にゃーーーーーー」って、猫役の男女8人で鳴いてみたら、「いいですね、これで行きましょう」ってことになりました。映画を観ていただければ、ぼくら、どこかで鳴いてます(笑)。

それは、感極まって鳴く感動的なシーンですか?

藤村

そうです。ぼくは「なぁああああーー」って鳴きました。

ああ、そういう猫、いますねえ。

藤村

いるでしょ?ちゃんと振付師が来て、動きも指導されて、難しい演技を要求されました。で、よく聞かれるんですけど、ぼくはれっきとしたサラリーマンです。会社で出勤扱いにしてもらって芝居をやったりしています(笑)。

デイリーポータルZというサイトのウェブマスターをしています、林と申します。

小国

今日、デイリーポータルに上がってたのが、「シーズン開幕のポスター、全部おれ」。

藤村

どうでもいいわ!

藤村さんと前にシェイクに出たときはニフティという会社にいました。そのあと藤村さんと会って「ニフティの親会社変わったんですよー」なーんてゲラゲラ笑ってたら。

藤村

あー言ってた言ってた。

今度は、デイリーポータルごと、別の会社に売られてしまって。いまねえ、iTSCOMっていう、東急グループのケーブルテレビの会社に入っちゃったっていう。

藤村

あなたってテレビは作ったりしてる?

してないです。でも、せっかくのテレビ局だから「動画流して流してー、Premiereで編集できますよ」って言ったら、それはダメだって。プロはPremiere使わないんですね。

藤村

編集ソフトの問題というより、あなたたちが作っているものを公共の電波に乗せていいのかっていう問題じゃない(笑)?

夜中の放送休止している時間に、「むかない安藤の動画を3時間とか流すのはどうですか?」って言ったら、「うんいいねー」って言われて、そのまんま。品位が高い会社って否定もしないんですよ。
(注:むかない安藤とは、YouTubeのプープーテレビで配信されている、ひたすらむかずにものを食べる安藤さんの動画)

藤村

会社が変わってから、やっぱりちょっとは沈んだっていうか、「おれたちだいじょうぶなのかな?」って空気はあったの?

しばらくありました(笑)。まあでもお互いじょじょに慣れていっています。

小国

NHKの小国といいます。学生のときに「水曜どうでしょう」をよく見ていて、藤村さんにお会いするのでひさしぶりに見返したんですね。あの番組って、本題がなかなか始まらないじゃないですか。喜界島一周企画を見て、びっくりしました。喜界島に行くまでに何十分使ってるんだよと。ずーっとホテルにいる(笑)。

藤村

そうそう。ずっと羽田の東急インにね。

小国

喜界島行ってもまたホテル。いつ島を回るんだよっていう、あの感じに、まさにいまなってますよね。なかなか本題が始まらない(場内笑)。それで、ぼくはNHKの制作局でディレクターをやっていますが、番組はいっさい作りません。3年前までは、「プロフェッショナル 仕事の流儀」「ドキュメント72時間」、「クローズアップ現代」などの、NHKらしい情報ドキュメンタリーを作っていました。3年前に電通に研修に行って、9ヶ月間PRを学んで、戻ってきてから、「もう番組は作らない」と決めたんです。

藤村

どうしてそう決めたの?

小国

4年前に心臓病になっちゃったんですよ。会社帰りのバスの中で、急にどーんって胸に突き上げるような感覚があって、心臓がどどどどどーって鳴って、目の前が見えなくなってくるし、汗は止まらないし。心室頻拍でした。すぐ集中治療室に入ってことなきは得たんですけど、医者からもうディレクターはやめたほうがいいと勧められたんですね。ロケに行きますからね。直前まで、中国にロケにずっと行っていて。もしそこでなってたら死んでたよって言われました。そのとき、かなり落ち込みました。一方で、ずっとやりたいな、と思っていたことがあって。

藤村

うんうん。

小国

ずっと、番組が届けたい層に届いてないな、と感じていたんです。調べてみたら「プロフェッショナル 仕事の流儀」を一番見てる層が、60代独居男性だった。でも、そこに届けたいと思って作ってる番組ではなんですよね。見てもらえるのは嬉しいんですけど……。

藤村

せっかくなら、これから頑張っていこうとする前途ある若者に見て欲しいよね。

小国

そう。ミスマッチが起きてる。だから、届ける仕事をしたいなーって思いました。死ぬ思いで作っても見てもらえないっていうのは、存在しないのと同じだから。

藤村

電通には、自分から希望して?

小国

そうです。それで戻ってきてから、自発的に「番組は作らない」って宣言しました。ぼくはもう心臓病だから作れないし、作る気もないんだって言わないと、会社側もぼくに番組を作らせようとするし、ぼくも番組作りに逃げたくなる。いちばん得意なジャンルは番組作りだからこそ、あえて退路を断とうと思いました。

藤村

それでなにをやってるの?

小国

まず、2016年に「プロフェッショナル 仕事の流儀」10周年記念で、「プロフェッショナル 私の流儀」というアプリを作りました。誰でもプロフェッショナルになれるというコンセプトで、自分だけの「プロフェッショナル風オリジナルムービー」が作れます。200万ダウンロードされて、そのうち6割が10〜20代だったです。リーチしたんですよ。

藤村

ぼくも作った!

小国

何のプロフェッショナルとして出たんですか?

藤村

お芝居! 「芝居って結局……自分と向き合うこと」みたいな(笑)。

[ 次回 コンテンツの力で届けていく へ続く ]

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